オーストラリア総選挙で与党が勝利、アルバニージー首相が続投
(オーストラリア)
シドニー発
2025年05月07日
オーストラリアで5月3日、連邦議会総選挙(下院総数150議席と上院の半数40議席の改選)が実施された。選挙管理委員会の発表(暫定集計情報)によると、アンソニー・アルバニージー首相率いる与党・労働党が下院の過半数を上回り、90議席(改選前78議席)を獲得した(5月6日午後2時半現在、注1)。世論調査や大方の予想(2025年5月2日記事参照)に反して、単独過半数を確保した労働党が勝利し、アルバニージー首相は政権2期目となる。内閣改造は5月12日の週以降に行われる見込みだ。
野党の保守連合(自由党、国民党)は下院で改選前の55議席から42議席に減らし、党代表のピーター・ダットン氏も自身の選挙区で労働党候補に議席を奪われ、落選した。前回総選挙で議席をのばした緑の党は労働党に議席を奪われ、改選前の4議席をすべて失う見込みだ。ティール(注2)と呼ばれる保守系候補含めた無所属候補は9議席を確保、2大政党に不満を持つ有権者が投票したとみられる。公共放送ABCによると、労働党は上院でも2議席増えた一方、保守連合は5議席失い、緑の党の議席数は変わらない見込みとしている。
労働党は、供給が不足している住宅問題、インフレの影響を受けた生活費高騰対策、国民の医療費負担軽減などを目指すメディケア(公的医療制度)の充実など、特に国内問題に焦点をあてて選挙戦を繰り広げた。そのほか、気候変動対策では、2030年までに電源の82%を再生可能エネルギーにする目標の継続、連邦政府の金融機関クリーンエネルギー金融公社(CEFC)を通じた再生可能エネルギーや低排出技術プロジェクトへの支援(2025年2月7日記事参照)などを掲げた(添付資料表参照)。
通商政策は、公約として大きく取り上げられなかったが、米国トランプ政権による関税の撤廃要請、安全保障協力に関する枠組み「AUKUS(オーカス)」での協力強化の一環で、米国との関係は重視している。アルバニージー首相は、5月5日にドナルド・トランプ米国大統領から電話で祝意が伝えられるとともに、関税やAUKUSについて議論したことを明かした。首相2期目の外遊先の候補としては、隣国インドネシアや米国が優先される見込みで、ほかにも5月26日からマレーシアで開催されるASEAN首脳会議、6月にカナダで開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)、9月の独立記念日に合わせたパプアニューギニアの訪問が挙られている(「オーストラリアン」紙5月4日付電子版)。
(注1)議席数はすべて5月6日午後2時半現在。
(注2)「Teal(ティール)」とは、英語で緑がかった青色のことを意味するが、これにならい、オーストラリアの無所属候補議員で、保守系だが環境派の政策方針を持つ議員のことを表している。オーストラリアにおける保守連合のイメージカラーの青、環境のイメージカラーの緑を組み合わせている。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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