与党の労働党がやや優勢、オーストラリア連邦議会総選挙の世論調査

(オーストラリア)

シドニー発

2025年05月02日

5月3日のオーストラリア連邦議会総選挙に向けて、アンソニー・アルバニージー首相率いる与党の労働党とピーター・ダットン代表が率いる野党の保守連合(自由党・国民党)について、最新の世論調査では労働党がやや優勢ながら接戦が続いている。

現地報道によると、調査会社ニュースポールが実施した世論調査で、2大政党別支持率は労働党が52%、保守連合が48%と、ここ4週連続の調査結果に変化がなかったという。一方で政党間支持率は、保守連合が35%、労働党が34%、緑の党が11%、ワンネーション党が8%、その他が12%と、保守連合がやや優勢で、両党とも過半数を超える支持率を獲得できていない(「オーストラリアン」紙(4月27日付電子版))。

市場調査会社ロイ・モーガンが4月27日に発表した調査では、2大政党別支持率は労働党が53%、保守連合が47%で、労働党が優勢だった。前回調査(4月22日発表)と比較すると、労働党は2.5ポイント減少した一方で、保守連合は2.5ポイント上昇し、労働党との差を縮めた。同社のミシェル・レビーンCEO(最高経営責任者)は、「依然として労働党が勝利すると見込まれている」としながら、4月22日の週から始まった期日前投票を済ませた有権者(注1)への調査では、保守連合がより支持される傾向が示されている。実際の選挙結果は、今回の調査結果よりも2党の差が僅差になり、労働党が過半数を取れずに少数与党政権となる可能性がある、と分析した。

4月29日に市場調査会社エッセンシャルリサーチが発表した調査では、2大政党別支持率は労働党が49.6%、保守連合が45.6%、決まっていないが4.8%で、労働党が4ポイント上回った。一方、両代表に対する支持は低下傾向で、不支持が上回っている状況だ。アルバニージー首相に対する不支持率は47%と支持率44%を上回り、ダットン代表に対する不支持率は51%で支持率39%を大きく上回った。

ダットン代表は、選挙公約だった連邦政府職員の在宅勤務終了計画の取りやめや、連邦政府が2022年から導入している電気自動車(EV)に対するフリンジ・ベネフィット税の免税(FBT、注2)(2024年10月30日付地域・分析レポート参照)の維持約束を発表後に撤回した。その他、ロシアがインドネシアに対して長距離航空機を配備する提案をインドネシア大統領が発表したという誤った事実を発言し、後日誤りを認めている。現地報道では、準備不足のまま選挙戦にのぞみ、土壇場で政策や発言の撤回を余儀なくされ苦戦している、と報じている。

アルバニージー首相に対しては、生活費高騰が続き国内経済も伸び悩む中、3年間の実績に満足していない有権者が多数いる。一方で、選挙戦では安定した手腕を発揮している、と現地専門家は評価した(「ガーディアン」紙4月29日付電子版)。

(注1)ロイ・モーガンによると、4月28日発表時点で期日前投票者が約240万人(全投票者の13%を占める)だったとしている。

(注2)フリンジ・ベネフィット税(FBT)とは、雇用主が従業員に支給する福利厚生に対して、雇用主が支払う税金。EVのFBT免税対象は、新車かつ高級車にかかる奢侈(しゃし)自動車税(Luxury Car Tax)の課税対象外〔2024年度は車両価格9万1,387オーストラリア・ドル(約850万円、豪ドル、1豪ドル=約93円)未満〕の車種で、バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)が対象。なお、2025年4月1日からPHEVに対するFBTの免税は対象外となる。

(青島春枝)

(オーストラリア)

ビジネス短信 71429a3944e3187c