ルーラ・ブラジル大統領が中国を公式訪問、中国企業による270億ドル投資を発表
(ブラジル、中国)
調査部米州課
2025年05月15日
ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は5月12~13日に中国を公式訪問した(5月12日付ブラジル外務省公式サイト)。ルーラ大統領は習近平国家主席との首脳会談を行い、第4回ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)・中国フォーラムに参加し、さらに複数の中国企業の幹部とも面談した。
12日に北京で開催されたCELAC・中国フォーラムでは、ルーラ大統領の訪中で、新たに中国企業による270億ドルのブラジル向け投資が行われることが発表された。インフラやエネルギー、保健医療の分野で投資が行われる(5月13日付政府系メディア「アジェンシアブラジル」)。
上海に拠点を置く再生可能エネルギー開発大手のエンビジョングループは、ブラジルでサトウキビ由来の航空燃料(SAF)生産に10億ドルを投資する(5月12日付大統領府公式サイト)。同国では2024年10月に持続可能な低炭素モビリティーを促進するための法律第14,993号(通称:未来の燃料法)が承認され、国内線を運航する航空会社は2027年1月1日以降、SAF使用によって温室効果ガス(GHG)排出量を年1%削減する義務が生じる(2024年10月16日記事参照)。
大統領はアレシャンドレ・シルベイラ鉱山エネルギー相とともに、中国国営エネルギー関連会社の運達能源科技股份(Windey Energy Technology Group)のQi Chen会長と会談し、両者間でブラジルでの風力やグリーン水素といった再生可能エネルギーや蓄電システムの研究開発を推進する覚書に署名した。ブラジルの地方都市では太陽光発電や風力発電を利用しているところも多い。発電量が変動する中、安定的なエネルギー供給が求められることや、都市部でも昨今のデータセンター増などで電力需要が増加していることから、蓄電システムの需要が高まっている(5月12日付現地紙「CPG」)。
ルーラ大統領と習近平国家主席は首脳会談後の共同声明で、ロシアとウクライナ間の戦争の早期終結に向けた両国間の対話を求めたほか、気候変動対策に向けた行動強化の必要性にも言及した。また、4月28~29日に開催されたBRICS首脳会合で議題の1つになりながら、共同声明の採択には至らなかった国連安全保障理事会の改革についても、中国はブラジルが国連で果たす役割を「支持する」と述べた(2025年5月8日記事参照)。
ルーラ大統領は訪中前の5月8~10日にはロシアを公式訪問し、ウラジーミル・プーチン大統領とも首脳会談を行っている(2025年5月13日記事参照)。
(辻本希世)
(ブラジル、中国)
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