BRICS外相会合、共同声明の採択に至らずも多国間主義の強化で一致

(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシア、サウジアラビア、ベラルーシ、ボリビア、カザフスタン、キューバ、ナイジェリア、マレーシア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタン、BRICS)

調査部米州課

2025年05月08日

ブラジルのリオデジャネイロ市で4月28~29日に、BRICS外相会合が開催された。4月30日付の現地政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」によれば、会合にはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、インドネシア、サウジアラビアの11カ国のBRICS正式加盟国と招待国を含む20カ国の外相が参加した(注)。1月にBRICSに正式加盟したインドネシアは、初のBRICS会合への参加となった(2025年1月14日記事参照)。

議長国ブラジルのマウロ・ビエイラ外相は会合後の会見で、「BRICSグループとしての役割はかつてないほど重要な局面を迎えている。政情不安や多国間主義の浸食といった世界的な危機に直面し、国際平和と安全保障の根幹が揺るがされている現状下で、BRICSは国際法の原則を順守する」と述べ、米国のトランプ政権下で発動される関税政策などの保護主義的な政策を意識し、これらに反対する立場を強調した。

なお、本会合では、共同声明の採択は見送られた。議題の1つだった国連安全保障理事会の改革をめぐる議論が合理に至らなかったためとみられる。4月30日付現地紙「メルコプレス」は、エジプトとエチオピアがブラジルやインドの常任理事国入りに反対したため、と報じている。また、米国による保護主義的な政策に対しては、各国ともに批判する立場で意見は一致したものの、BRICSグループとしての姿勢についてはコンセンサスが得られなかった(4月30日付現地紙「メルコプレス」)。加盟国が増える中、BRICSとしての意見の一致や合意を得ることの難しさが露呈する結果となった。共同声明の採択は、7月6~7日にリオデジャネイロ市で開催されるBRICS首脳会合に持ち越されるとみられる。

ビエイラ外相は会合後の議長声明の中で、「加盟国の間では、多国間主義をより強化することで一致した」と述べ、BRICSが多国間貿易体制を重要視していることをあらためて強調した。

(注)2025年1月1日付で、ベラルーシ、ボリビア、カザフスタン、キューバ、ナイジェリア、マレーシア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタンの9カ国がBRICSのパートナー国として加盟した。パートナー国は、加盟国に次ぐ立場にあたる準加盟国に相当し、加盟国との経済協力や会議への参加の権利を持つ(2024年10月31日記事参照)。この度の外相会合には、11カ国の正式加盟国と9カ国のパートナー国の合計20カ国の外相が参加した。

(辻本希世)

(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、インドネシア、サウジアラビア、ベラルーシ、ボリビア、カザフスタン、キューバ、ナイジェリア、マレーシア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタン、BRICS)

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