欧州産業連盟、次期EU議長国デンマークに、経済強化に向け結束訴える

(EU、デンマーク)

ブリュッセル発

2025年05月29日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は5月23日、2025年下半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国のデンマークへの政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUが直面する地政学的・社会的な課題解決には、経済や企業競争力の強化が不可欠で、EUの結束と確固たる行動がこれまで以上に求められていると訴えた。

具体的には、通商分野では、米国の関税政策に対し、EUの利益を擁護、かつ対話による解決を目指すよう主張した。同時に、英国との関係深化(2025年5月21日記事参照)や、EU・メルコスール間の自由貿易協定(FTA、2024年12月10日記事参照)の早期批准など、貿易相手や投資先の多様化を進めるべきとした。

企業の競争力強化に向けては、まずエネルギー価格について、欧州委員会が「クリーン産業ディール」(2025年3月4日記事参照)などで示した施策では、短期的には価格引き下げを実現できないと断じ、デンマークに対し、より実効性が高い具体策の早期展開を要請した。「より良い規制」では、産業界の提言(2025年1月31日記事参照)も取り入れながら、規制やデューディリジェンス関連の報告の簡素化(2025年3月7日記事2025年3月7日記事参照)を進めるべく、加盟国間の交渉でデンマークの調整力に期待を示した。

また、企業が必要とする人材や労働力不足への対応も重要項目に挙げた。各加盟国で状況は異なるが、企業競争力の強化や生産性の高い雇用の創出に向け、加盟国の権限を尊重しつつ、社会的パートナーと協力することが不可欠と指摘した。ビジネスヨーロッパも欧州委の「技能同盟(Union of Skills)」(2025年3月14日記事参照)構想などの実現に向け、協力していく姿勢を示した。

このほか、単一市場の深化における障壁の撤廃、研究開発分野の規制緩和や予算拡充などに加え、安全保障分野についても提言した。加盟国の裁量権を尊重しつつ、EU共通の防衛・危機対応戦略が必要と主張し、関連産業分野の発展はEUにとって競争力強化や産業振興のカギとなるとした。特に重要インフラ、産業とサービスの危機発生時の機能保全や、EU防衛産業部門の生産能力の拡大に向け、公共調達での製品要件の調和などに対応するため、官民協力の強化に資する戦略が必要だとした。

(滝澤祥子)

(EU、デンマーク)

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