チャンギ空港の第5ターミナル着工、コネクティビティ強化へ
(シンガポール)
シンガポール発
2025年05月16日
シンガポールのチャンギ空港の新ターミナルである第5ターミナル(T5)の着工式が5月14日、行われた。建設は、旅客の動向に応じて段階的に行われ、第1期工事は2030年半ばに完成する予定だ。同空港の旅客取り扱い能力は現行の年間9,000万人から1億4,000万人へと増加する見込み。同空港を発着する航空路線を結ぶ都市は現行の約170都市から、約200都市への拡大を目指す。
T5は、同空港の既存の第1~4ターミナル(T1~4)の東、チャンギ・イースト開発区に建設される。同開発区の面積は1,080ヘクタールと、現在のチャンギ空港の敷地面積とほぼ同じだ。シンガポール都心部と北東部の開発区との間の移動を円滑化するため、既存の大量高速鉄道(MRT)トムソン・イーストコースト線(TEL)とクロス・アイランド線がT5に接続する計画だ。TELは、2026年末に完成予定のマレーシア南部ジョホール州とシンガポールを結ぶ高速輸送システム(RTS、2023年5月15日記事参照)にも接続される。さらに、T5は高速船のタナメラ・フェリーターミナルに近接することから、航空旅客が簡単に高速フェリーに乗り継げるようにする構想もある。
チャンギ空港の2025年第1四半期(1~3月)の利用旅客数は1,720万人と、新型コロナ禍前の2019年第1四半期を4.8%上回った。2025年3月までの1年間の旅客数は過去最高の6,840万人へと増加していた。
環境に配慮、旅客対応で最新テクノロジーを導入へ
ローレンス・ウォン首相兼財務相は同日の着工式で、「T5は規模(が拡大する)だけでなく、スマートなターミナルになる」と述べた。最新のテクノロジーの導入で、空港の運営と、旅客と手荷物の取り扱いを効率化する計画だ。同空港では現在、地上支援チームが効率的に対応できるよう、人工知能(AI)と映像分析技術を用いたロボットを導入して、雨や落雷の中でも、預け入れ荷物を速やかに乗客に渡せるようにする実験も行われている。
さらに、ウォン首相は「T5は持続可能なターミナルとなる」と語った。T5の屋根には太陽光パネルを設置。エネルギー効率を向上するため、分散型地域冷房システム(注)も導入する予定だ。
(注)熱源プラントから配管を通じて冷水や温水などの熱媒を供給し、特定の地域内に点在する建物の冷暖房を担うシステム。省エネルギー、環境負荷の低減、災害への強さなどのメリットがある。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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