第8次国家電力基本計画を改定、原子力などを追加し目標を上方修正

(ベトナム)

ハノイ発

2025年05月07日

ベトナム政府は4月15日、2021年~2030年の電力開発指針「第8次国家電力開発基本計画」の改定(以下、改定版PDP8)を承認した。同日付の首相決定768/QD-TTgで公布、即日発効した。同計画には、2024年に改正された電力法を踏まえて、原子力や液化天然ガス(LNG)、新エネルギーなどの発電計画を追加した。付属文書では、2030年までの大型発電所、送電網の開発予定案件なども一覧化した。

改定版PDP8における2030年の発電設備容量の目標は18万3,291~23万6,363メガワット(MW)とし、改定前の目標(15万489MW、2023年5月30日記事参照)から大きく上方修正した(添付資料表参照)。2024年末時点の設備容量は8万2,387MWのため(2025年4月15日記事参照)、現在の設備容量の2.2倍以上の増設が求められる計算だ。特にLNGによるガス火力発電や陸上風力発電の開発に注力し、原子力や廃棄物、揚水発電などの目標を新たに明記した。太陽光は、集光型と、改定前の目標では除外していた屋根置きを含めた数値を設定した(注)。

原子力と沖合の洋上風力は2030~2035年に稼働予定としつつ、状況によっては前倒しすると記載された。原発は、中部ニントゥアン省の開発計画に注力する(2025年2月20日記事参照)。

輸入電力は、改定前の5,000MWから大きく修正し、9,360~1万2,100MWとした。主にはラオスからの輸入を念頭に置くが、中国からの輸入も進める計画だ。

2030年の発電量(輸入を含む)の目標は約5,604億~6,246億キロワット時(kWh)とし、このうち再生可能エネルギー(再エネ)が占める比率を28~36%にすると定めた。

改定版PDP8では、2050年のビジョンとして、設備容量を77万4,503~83万8,681MWとする方針が示された。同水準は、2030年目標の4倍超となる数値で、これにより総発電量は1兆3,601億~1兆5,111億kWhとなることが見込まれ、このうち74~75%を再エネで賄う。

これらの電源と送電網開発に必要な投資額は、2026~2030年に1,363億ドル(うち送電網開発に181億ドル)、2031~2035年に1,300億ドル(同159億ドル)、2050年までにさらに5,691億ドル(同279億ドル)と試算している。

しかし、これらの計画を具体化するには、財源が不透明であるほか、法整備と許認可を加速し、外資を呼び込む措置を講ずることが必要となりそうだ。

(注)国家送電網に接続しない、自家消費型の屋根置き太陽光などは数値に含まれない。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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