2024年の電力状況、発電量は前年比9.4%増、新規の電源開発は停滞

(ベトナム)

ハノイ発

2025年04月15日

ベトナム国内の電力事業を担う国営企業ベトナム電力総公社(EVN)の発表資料などによると、ベトナムの発電設備容量は2024年末時点で8万2,387メガワット(MW)だった(添付資料表1参照)。2022年の発電設備容量(8万704MW)と比べ、わずかな増加にとどまった。

2021~2030年の電力開発指針「第8次国家電力開発基本計画(PDP8)」(2023年5月30日記事参照)では、2030年までに発電設備容量を15万MW超にする目標を掲げ、その達成には、今後5年で新たに約7万MWの電源を開発する必要がある。

電源別にみると、石炭火力(2万6,757MW、構成比32.5%)とガスおよび石油火力(8,653MW、10.5%)を合わせた火力発電が全体の43.0%を占める。水力(2万3,664MW)の構成比は28.7%だった。太陽光(1万6,410MW、19.9%)、風力(5,037MW、6.1%)を合わせた再生可能エネルギー(再エネ)の構成比も26.0%に達した。しかし、再エネ電源の97%以上が中部と南部に位置しており、北部はわずか593MWにとどまった。

2024年の発電量は前年比9.4%増の30万8,732ギガワット時(GWh)だった(添付資料表2参照)。経済成長の復調に加え、乾季(4~6月)の全国的な暑さなどが需要を押し上げた。2023年と比べ、ガスおよび石油火力の発電量が大きく減少したが、石炭火力と水力が増加した。石炭火力の構成比は49.5%まで上がった。再エネの発電量は3万9,641GWhで、前年からほぼ横ばいだった。

北部では今後も厳しい状況続く

夏場に電力不足に陥りやすい北部では、とりわけ2023年4~7月、電源開発の遅れと猛暑による電力需要の増加などが相まって、例年以上に電力不足のリスクが深刻化した(2023年6月9日2023年6月29日記事参照)。2024年は、事前の供給計画や十分な雨量により水力発電が稼働できたことなどを受け、深刻な電力不足を回避した。2025年の北部の電力使用量は前年比11.3%増が予測される。

電力関係者によれば、2025年の北部の設備容量は、三菱商事などが出資するブンアン2火力発電所や、水力発電などの新規開発により、2,013MW相当の増加が見込まれる。また、2024年8月末に完成したクアンチャック(中部クアンビン省)~フォーノイ(北部フンイエン省)間の500kV(キロボルト)送電線により、中部から北部への送電容量は2,500MW増加した。ただし、ピーク時の北部の発電容量は前年比11.0%増にとどまるという。外国企業による大型投資が北部に集中するなか、電力の余剰がない状況が続くため、供給状況を注視する必要がありそうだ。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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