インドネシア、米国との相互関税交渉が本格化、実務者協議が始動
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年05月01日
米国の相互関税政策を巡るインドネシア政府の交渉が本格化している。アイルランガ・ハルタルト経済担当調整相率いるインドネシア代表団の訪米で始まった交渉は、両国の実務者チームによる技術的な協議へと移行した。4月17日にはアイルランガ調整相とジェミソン・グリア米国通商代表部(USTR)代表らとの会談が行われ(2025年4月22日記事参照)、その後の協議を経て、同月23日に「相互貿易・投資・経済安全保障に関する2国間協定に関連する情報の取り扱いに関する合意」に署名した(4月24日付、経済担当調整府プレスリリース)。これは、機密情報を含む詳細な議論を円滑に進める基盤となるもので、両国は2週間以内に実質的な技術協議を開始し、60日間の目標期限内での合意形成を目指す見通しだ。
インドネシア側が4月上旬に提示した提案は、関税のみならず、非関税障壁や貿易収支の均衡化計画なども含む包括的な内容で、「公正かつ公平」な貿易スキームによって双方に利益のあるかたちでの解決策を目指すものとされる(4月28日付、経済担当調整府プレスリリース)。エネルギー安全保障や、インドネシア製品の競争力向上のための関税率調整、規制緩和によるビジネス環境改善、重要鉱物サプライチェーンに関する協力、科学技術面での連携などが提案の柱となっている。アイルランガ調整相は「米国政府や、米国-ASEANビジネス評議会、半導体工業会などの経済界は、インドネシア政府の講じた対応を評価する姿勢を示した」と述べた(4月25日付、経済担当調整府プレスリリース
)。
こうした交渉結果を受け、プラボウォ・スビアント大統領は交渉加速のため、雇用機会拡大・解雇緩和、投資環境改善・事業許認可の迅速化、貿易・投資・経済安全保障交渉という3つの省庁横断的なタスクフォースを設置することを承認した。両国は6月上旬まで(60日以内)に具体案を取りまとめ、90日間の関税発動猶予期間内での交渉妥結を引き続き目指す構えだ。
アンダラス大学のシャフルディン・カリミ教授は政府の交渉姿勢について、「政府の能動的な提案は評価できるが、非関税障壁の過度な譲歩で戦略産業の自立を損なうべきではない」とし、慎重に交渉を進めるべきとの考えを示した(「アンタラ」4月27日)。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
ビジネス短信 68dcc689993909a0