建設中止となっていた米ニューヨーク州の洋上風力発電プロジェクトが再開

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月22日

米国ニューヨーク(NY)州のキャシー・ホークル知事(民主党)は5月19日、トランプ政権により建設中止命令がなされていたエンパイア・ウインド1プロジェクト(2025年4月18日記事参照)について、ドナルド・トランプ大統領およびダグ・バーガム内務長官との間で同命令を解除し、プロジェクトを進めることで合意したとの声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これを受けて、事業主体であるエクイノールは、建設を再開し、予定どおり2027年の商業運転開始を目指していくことを表明した。

ホークル氏は声明において、自身がホワイトハウスに積極的に働きかけてきたことに触れ、「NY経済の未来は、私たちの家庭や企業の繁栄につながる豊富でクリーンなエネルギーによって支えられる。NY州のクリーンエネルギー関連の雇用(1,500人)を守るために戦い、われわれはそれを成し遂げた」として、今回の成果の意義を強調した。エネルギー関連の調査会社オーロラ・エナジー・リサーチのレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によれば、次の理由から特にNY州南部で電力の信頼性を維持するためには洋上風力発電容量の追加が必要だとしている。すなわち、(1)他州からの電力調達には送電網の制約があること、(2)電化などの影響により、特に冬場に電力需要の増加が見込まれること、(3)老朽化した発電所の廃止が進むこと、(4)ガス火力発電の新設はサプライチェーンの制約から8年程度の時間が必要となること、(5)水素や小型モジュール炉(SMR)といったほかのクリーン電源については商業規模での展開にはまだ至っていないこと、などだ。この点において、今回の洋上風力発電プロジェクトの再開は朗報といえそうだ。

なお、ホークル氏の声明では、併せて「NY州法の法的要件を満たす新たなエネルギープロジェクトについて、行政および民間企業と協力することをあらためて表明する」としている。これに関しては、トランプ氏の進める北東部での天然ガス探査の拡大とペンシルベニア州からNY州にガスを輸送するパイプライン建設との関連を指摘する声もある(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月19日)。原油・天然ガスの開発を進めたいトランプ政権と、再生可能エネルギーの導入を進めたいNY州との綱引きは今後も続きそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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