米財務省、対米投資審査のファストトラック制度の試験運用を発表、対米投資の促進に向け
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年05月12日
米国財務省は5月8日、同盟国・パートナー国の対米投資の促進に向けた、対米投資案件審査の「ファストトラック制度」を試験運用すると発表した。
ドナルド・トランプ大統領は2025年2月に発表した「米国第一の投資政策」と題した大統領覚書の中で、先端技術など重要分野における同盟国・パートナー国の対米投資の促進に向けて、外国投資家による安全保障条項の順守を条件に、対米投資案件審査のプロセスを迅速化する、ファストトラックを設立することを関係閣僚に指示していた(2025年2月25日記事参照)。
同制度の内容や、対象国・地域、対象企業などの具体的な情報は現時点で明らかになっていない。ただし、今回の財務省の発表によれば、対米外国投資委員会(CFIUS)が外国投資家から対米投資案件の申告・届け出を受領する前段階で情報収集を図る、「既知の投資家ポータル(Known Investor Portal)」を設立することが含まれるもようだ。財務省は、同制度を試験運用した後、対象を拡大する予定としている。
財務省のスコット・ベッセント長官は、「米国は、同盟国・パートナー国の強力で安定した投資から、恩恵を受けている」「経済に利益をもたらす、開かれた投資環境を維持・強化すると同時に、プロセスの効率化を図り、対米投資に伴う安全保障上の脅威を特定・対処する能力が低下することのないよう努める」と述べた。
CFIUSは、対米投資案件が米国の安全保障に脅威を及ぼすかどうかを審査・調査する省庁横断の委員会だ(注)。CFIUSの活動に関する財務省の最新の報告書によれば、2023年(2023年1~12月)のCFIUSへの申告・届け出の件数は342件で、このうち26件が日本企業の対米投資案件だった(2024年7月24日記事参照)。2023年のCFIUSの審査・調査の平均期間は、投資内容によって異なるものの、簡易申告(declaration)に対する審査(assessment)で29.9日、届け出(notice)に対する第1段階の審査(review)で45.8日、第2段階の調査(investigation)で85.8日を要している。
(注)CFIUSの概要や動向については、2023年10月2日付地域・分析レポート参照。
(葛西泰介)
(米国、日本)
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