インド・パキスタン軍事衝突後のインドで、トルコやアゼルバイジャンへのボイコット拡大

(インド、パキスタン、トルコ、アゼルバイジャン)

ニューデリー発

2025年05月21日

インドとパキスタンの5月6日からの軍事衝突(2025年5月9日記事参照)を機に、インドとトルコ、アゼルバイジャンとの関係が悪化している。インドとパキスタンは10日に停戦合意を発表し(2025年5月13日記事参照)、事態は一段落したが、トルコとアゼルバイジャン両政府による、軍事攻撃に対するインドへの批判的な声明がインド国内メディアに取り上げられ、両国に対する反感がインドで強まっている。

トルコ外務省は7日、「6日にインドが行ったパキスタンへの攻撃は全面戦争のリスクを高めるもので、そのような挑発的な措置や民間人を標的とした攻撃を非難する」との声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。アゼルバイジャン外務省も7日、「(インドによる)パキスタンに対する軍事攻撃により、市民が死傷したことを非難する」との声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。さらに、インド国内では、パキスタンのインドに対する攻撃でトルコ製のドローン兵器が使用されていたことが報じられ(「タイムズ・オブ・インディア」紙5月14日)、両国への反感感情が高まった。

これらの声明や報道を受け、インドではSNSなどを通して、両国への旅行や両国からの輸入品購入に対するボイコットを呼びかける動きが民間主導で拡大している。インドの旅行予約サイト大手メークマイトリップでは、同社のプラットフォームを介した両国への旅行予約は60%減少し、キャンセル件数は250%増加した(「フィナンシャル・エクスプレス」紙5月14日)。他の旅行予約サイトでは、両国への航空券や宿泊施設の予約サービスの提供を停止する動きも出ている。また、貿易業者の間では、トルコからの輸入量が多いリンゴや大理石などの輸入を停止する動きが広がっている(「マネー・コントロール」5月14日)。

この流れは徐々に、公的機関や学術交流にも影響を及ぼし始めている。15日にはインド航空安全局(BCAS)が国家安全保障上の懸念を理由として、デリー、ムンバイ、アーメダバードの主要空港で貨物ターミナル管理や地上業務を担当していたトルコの空港運営会社チェレビの事業許可を取り消した。また、18日にはインド工科大学ボンベイ校(IITB)など複数の主要大学が地政学的な状況を理由として、トルコの大学と締結している協定を停止すると発表したことが報じられた(「ミント」紙5月18日)。

これまで、インドは両国と良好な関係を築いてきた。特にトルコとは、1973年に貿易促進を目的とした貿易協定を締結しており、2024年度(2024年4月~2025年3月)のトルコからの輸入額は29億8,610万ドルだった。さらに、トルコ、アゼルバイジャン両国とインドの間では、それぞれ直行便が運航しており、近年はインド人に人気の旅行先にもなっていた。

なお、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は14日、X(旧Twitter)上でパキスタンについて「大切な兄弟」と投稿し、パキスタンへの揺るぎない支持をあらためて表明している。

(丸山春花)

(インド、パキスタン、トルコ、アゼルバイジャン)

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