ペルー経済財政相、コロナ禍以降の年金特例措置の繰り返しに反対

(ペルー)

リマ発

2025年05月26日

ペルーのラウル・ペレス・レジェス経済財政相は5月20日の会見で、議会経済委員会が検討している労働者の民間年金(AFP)に関する一時引き出し措置について、「労働者が将来、退職する際に受け取る年金額に与える影響が大きく、AFP積立金の運用財源の減少にもつながる」ことから反対する姿勢を示した。

確定拠出型の年金制度であるAFPは原則65歳から受給される仕組みになっているが、政府は新型コロナ禍の特例措置として、2020年に年齢にかかわらず一時的に引き出しを可能にすることを認めた。以降、2024年までに合計7回にわたって特例措置を講じている。経済界や識者からは、コロナ禍と比較して社会の状況が改善しているにもかかわらず、議会関係者が将来の年金受給や運用財源確保に影響する特例措置を繰り返そうとする姿勢に疑問の声が出ていた。レジェス氏は閣僚経験が豊富だが(2025年5月16日記事参照)、経済財政相に就任するのは初めてで、どのような政策の方向性を示すかが注目されていた。

ペルーではインフォーマル労働者が多く、65歳以上の高齢者になっても年金受給がないため働き続けざるを得ないケースが後を絶たない。そのため、年金制度の普及と適切な運用が重要な課題となっている。

国家統計情報庁(INEI)によると、65歳以上のうち2024年に何らかの年金受給があった人の割合は34.2%で、無年金だった割合は65.8%だった。また、2024年第4四半期(10~12月)の、60~69歳における労働力人口比率(就業者と完全失業者の合計)は69.7%だった。

(石田達也)

(ペルー)

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