米国関税のタイ農業分野への影響分析、中国産品との競争に警戒感

(タイ、米国)

バンコク発

2025年05月07日

タイ商務省は4月28日、米国トランプ政権下の貿易政策が与える、タイの農産品への影響分析を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。タイの対米農産品輸出(2024年:47億5,900万ドル、注)について、米国での中国産品に替わるシェア拡大を期待する一方、タイおよび第三国での中国産品との競争激化を警戒すべき農産品を列挙した。

分析は、商務省の貿易政策・戦略事務局(TPSO)が行った。TPSOのプーポン・ナイヤナパコーン局長は、米国の貿易政策である輸入関税の引き上げと中国製品に対するデミニマスルール適用の撤廃や、中国側の報復関税の動向を注視しているとした。その上で、2024年の貿易統計を基に、米中貿易戦争の影響を受ける可能性のある農産品を次の3グループに分類した(添付資料表1、表2参照)。

(1)米国でタイがトップシェアなどを有し、中国に代わってシェア拡大が見込める農産品:ペットフード、コメ、サバ調製品、ソールフィレ、タケノコ調製品

(2)米国で中国がトップシェアなどを持ち、タイのシェアは小さい農産品:その他パスタ製品(ビーフン、春雨など)、冷凍イカ、醤油(しょうゆ)、その他魚調製品(アジなど)

(3)中国が潜在力を持ち、タイも自国生産できる農産品(タイの国内需要に満たず輸入が必要な品目など):ニンニク(生・冷蔵)、その他野菜調製品(保存用)、乾燥唐辛子・胡椒(こしょう)(破砕・粉砕していないもの)、その他緑茶(発酵していないもの)、タマネギ(乾燥・粉末)

特に(3)は、米国の追加関税により中国が米国に輸出しにくくなっていることを踏まえ、中国からタイへの流入増加のほか、米国以外の第三国の市場でのタイ製品と中国製品との競争激化の可能性があるとして、貿易構造が転換しないか監視が必要としている。

同局長は、貿易戦争のタイへの影響を軽減するため、密輸防止や品質・基準順守のための輸入監督および関連規制の執行・取り締まり、米国が貿易障壁を課す根拠となり得る知的財産保護などの問題への対処、市場拡大のための自由貿易協定(FTA)早期締結など、戦略を策定すると述べた。

(注)農産品はHS01類~HS24類が対象。タイの対米輸出上位10品目は次のとおり:(1)ペットフード、(2)コメ、(3)ツナ(調理済み)、(4)その他果物・野菜ジュース、(5)その他の調理済食品、(6)ソース・同準備品、(7)調理済みエビ、(8)冷凍エビ、(9)果物・ナッツ(調理済み)、(10)調理済みパイナップル。

(藪恭兵)

(タイ、米国)

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