ロシアとウクライナの直接交渉、米ロは電話会談、即時停戦への成果見込めず
(ウクライナ、ロシア、米国)
調査部欧州課
2025年05月20日
約3年ぶりとなるロシアとウクライナの停戦に向けた直接交渉が5月16日、トルコのイスタンブールで実施された。この直接交渉は11日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が提案したものだった。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は「トルコでプーチンを待つ」と述べて、大統領レベルの停戦協議を求めたものの、プーチン大統領は応じず、ウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官率いる代表団を派遣した。これを受けて、ウクライナ側はルステム・ウメロフ国防相を団長とする代表団が交渉に参加した。
直接交渉の結果、双方から1,000人の捕虜交換と、各国の停戦に向けたビジョンの作成・提示などが決まった。会談後の記者会見で、ウクライナ側は、ロシア側からは受け入れられない要求があったが、冷静にウクライナ側の路線を貫いたと説明した。また、ロシアのプーチン大統領のみが決断できる事項が多いとして、可能な限り早く2国間の首脳会談実施を求めた。ロシア側は、交渉は満足できるものだったと評価し、協議継続の意向を示した一方、首脳会談については検討中とした。複数のメディアによると、ロシア側はウクライナが望むだけ戦争を継続する準備があると、強固な姿勢で直接交渉に臨んだ。
ゼレンスキー大統領は18日、イタリアのローマで米国のJ.D.バンス副大統領、マルコ・ルビオ国務長官と会談し、直接交渉の結果について報告した。ロシア側が提示した非現実的な停戦要件や、決定権のない交渉団の派遣は、ロシアの終戦意思の欠如を表しており、ロシアに無条件の停戦を合意させるために圧力が必要だと強調した。
一方、米国のドナルド・トランプ大統領は19日、プーチン大統領と約2時間の電話会談を行った。直後に自身のSNSで、電話会談はとてもうまく進み、ロシアとウクライナはすぐに停戦・終戦交渉を行い、その条件は当事者間で交渉されると述べた。
プーチン大統領は会談後、一連の立場を明確にした将来の和平条約の可能性に関する覚書について、ウクライナと協力する用意があると表明した。一連の立場の例として、問題解決の原則や、和平合意の時期、合意した場合の停戦の可能性を挙げており、即時停戦とは異なる考えを示した。さらに、ロシアとウクライナは妥協点を見つける必要があるが、「この危機の根本的な原因を排除することが重要」というロシアの明確な立場を強調した。トランプ大統領の楽観的な見方の一方で、ロシアのこれまでと変わらない姿勢に、停戦への大きな進展はなかったとの見方が広がっている。
(柴田紗英)
(ウクライナ、ロシア、米国)
ビジネス短信 2d64754116da2a91