ペルー内閣改造に対する経営者の受け止め、識者見解

(ペルー)

リマ発

2025年05月19日

ペルーの諸経済団体の代表者は、5月13~14日に行われた内閣改造(2025年5月16日記事参照)について、相次いでコメントを発表した。

ペルー輸出業組合(ADEX)のセサル・テジョ会長は13日の記者会見で「ラウル・ペレス・レジェス経済財政相は、これまでの閣僚経験を生かし、国内外から民間投資を呼びこみ、国内の雇用創出につなげてくれるだろう」と述べた。また「ペルーは中期的に輸出額1,000億ドルを目指すべきで、それは不可能な数字ではない。この実現には官民の連携が欠かせない」とし、官民対話を重視した財政政策に期待を寄せた。

ペルー経団連(CONFIEP)のホルヘ・サパタ会長はレジェス経済財政相について「能力が高く、政府のことを理解しており、経験が豊富だ」と高く評価した。一方、運輸通信相に就任したセサル・サンドバル氏については「産業界での知名度は低く、省庁の運営経験もなく、謎めいた人事だ」と疑問を呈した。その上で「省の運営に必要な専門的な知識を有する人物を登用すべきだ。問題は、特定の政党に所属しているか否かということではなく、本人のこれまで経験だ」とコメントした(5月15日付「ヘスティオン」紙)。

また、ジェトロは5月14日、ペルー貿易協会(COMEX)のエグゼクティブディレクターのハイメ・デュプイ氏に、内閣改造に対するペルーの経営者の受け止め方を聞いた。デュプイ氏は前提として、ディナ・ボルアルテ大統領の置かれている状況を理解する必要があると指摘している。

ボルアルテ大統領は政治家出身ではないため、基盤となる政党がない。また、5月12日に民間調査会社ダトゥンが発表した世論調査では、大統領の支持率は2%だった。政治面でも世論でも支持を得られていない状況に加え、2026年4月に総選挙を控えており、政治環境が流動的になりやすいという。

このような状況から、ペルーの経営者は今回の内閣改造について「ボルアルテ大統領の置かれている不安定、かつ、厳しい事情を理解しつつも、経済財政運営の継続性について注視している」と話す。

また、首相に任命されたエドゥアルド・アラナ前法相について、「政権運営を巡る環境は厳しさを増しており、大統領は首相を務めてくれる人物を閣外から探すことは難しかっただろう。6月には議会の議長交替も予想され、大統領は身近で、かつ、政治的な動きに対応できる人物を首相に配置することを考えざるを得ない。このタイミングで首相の役を受けてくれる人は多くはなかっただろう」と述べ、首相の人選に政治的な判断が必要だったとの見方を示した。

その上で、「1月に就任したばかりだったホセ・サラルディ前経済財政相は経済団体や企業と密に連携し、投資を呼び込む姿勢で仕事を行い、経営者に安心感を与えてくれた。新大臣にも同じ姿勢で取り組んでほしい」と期待を示した。

(石田達也)

(ペルー)

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