米関税政策による影響と対応、メキシコの日本・アジア産食品関連企業に聞く
(メキシコ、米国、日本)
メキシコ発
2025年05月09日
メキシコへの日本・アジア産食材の商品流通は、米国を経由してメキシコに再輸出されるケースが多く、米国トランプ政権の関税政策によって、メキシコにおける食材の販売価格や仕入れ量に影響が出ることが予想される。ジェトロは、日本・アジア産食材を多く輸入する複数の在メキシコ食品関連企業に対して、現在の影響や今後の対応方針についてヒアリングを行った(注1)。
まず、日本産食材については、現状は大きな影響が見られていないとの声が大半だった。「トランプ政権の政策が二転三転している状況を踏まえ、出荷元が緊急ではない輸出(日本から米国)を後ろ倒しにしていると聞く」とのコメントもあった。
他方で、メキシコの日本食レストランなどでも多く利用されている中国産食材に関しては、「米国経由で仕入れている商品の値上げ通知が既に来ており、今後、販売価格への転嫁は避けられない」「米国を経由せずに直接輸入できないか、いくつかの商品で検討・交渉を始めている。他国産(類似商品など)に切り替えができればそのように対応する」といった反応があった。また、「メキシコでの需要に基づいて商品を仕入れているため、販売先顧客が価格に満足しており、需要がある限りは米国経由での仕入れを止めることはない」との方針を示す企業もあった。
その上で、一部企業からは、「今回の関税政策以前から取り組んでいることではあるが、なるべく多くの商品を日本から直接仕入れるようにしている」「流通業者の方針に左右されないよう、自社で直輸入できるルートを探す必要がある」と、米国経由のルートや他社に依存しないかたちでの調達を増やす重要性が指摘された(注2)。他方で、「メーカーがメキシコへの直接輸出を希望しない場合や最低購入数量を満たせないケースもあり、直接輸入ができていなかった」と、米国経由で商品調達せざるを得ない状況も言及された。また、「直接輸入の場合の手続き・必要書類についての知識が自社に不足していることが課題。商品によってはメキシコでの独占販売契約が他社と結ばれており、別の類似商品を新たに探す必要があることも懸念材料だ」との不安の声も聞かれた。
メキシコに日本から直接輸入を行う場合、日・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)または環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)のいずれかを活用することで、最恵国待遇(MFN)税率よりも低い関税率または無税で輸入できるケースが多い。価格競争力を得るために、品目に応じて適した貿易協定を活用することがより一層推奨される。
(注1)本記事は、2025年4月下旬から5月上旬にジェトロが実施した各社ヒアリングをまとめたもの。
(注2)メキシコにおける調達先多角化については、2025年4月21日記事で事例を紹介している。
(深澤竜太)
(メキシコ、米国、日本)
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