新型コロナ後にメキシコで進めた調達先多角化が米関税政策のリスクヘッジに
(日本、メキシコ、米国)
デジタルマーケティング部ECビジネス課
2025年04月21日
メキシコで本格日本食レストランを3店舗直営するエンカウンター・ジャパン(Encounter Japan)は4月2日、日本の輸出酒類卸売業免許に加えて、メキシコの酒類輸入免許を取得したことを発表した(注1)。これにより、自社が日本で酒蔵や酒造所から買い付けた酒類をワンストップでメキシコに輸入して顧客に販売する一気通貫の商流を構築した。同社は現在、レストラン運営に加え、メキシコのフラッグキャリアのアエロメヒコ航空や、メキシコ市内の最高級ホテルへの日本酒卸売りなども行っている。今回の新たな商流により、メキシコでの販売価格競争力を得るだけでなく、日本産酒類を飲んだことがない新たな顧客層の開拓も狙う。
エンカウンター・ジャパンの日本産酒類のメキシコへの新しい商流図(同社提供)
メキシコでの日本産食材の調達商流は主に2つある。1つ目は日本から直送される場合、2つ目は米国に輸入された商品がメキシコ向けに再輸出される場合だ。日本でコンテナを仕立てられる物量の場合は一般的に前者で輸入されるが、経済圏が米国カリフォルニア州と一体化しているメキシコでは、陸路での商品輸送が可能で、通関も容易なことから、小ロットの場合は後者が選択肢となる場合が多い。だが、米国経由で調達すると、米国内での消費需要が拡大した場合にメキシコ向けの再輸出量が少量となり、割高で調達せざるを得ない傾向にあった。ここに、2020年からの新型コロナウイルス禍を契機とした物流の混乱により、かつお節などの基礎品目にも欠品が相次ぎ、価格高騰と商品の取り合いが発生した。また、2023年の東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出を受けた中国による日本産水産物の輸入停止措置も、メキシコの日本食業界に大きな影響を与えた(注2)。
こうした状況を経験した同社最高経営責任者(CEO)の西側赳史氏は、供給元を第三国の需要に左右されないかたちで構築すべきと考え、米国や他社を介さない輸入方法の開拓や、日本国内の調達先の多角化を進めていた。現在、トランプ米政権の関税政策によって米国への輸入価格上昇が見込まれる中、新型コロナ禍から準備をしていた多角化対策が思わぬかたちで、リスクヘッジにつながる可能性が出てきた。西側氏は「小ロットの調達でも、日本からメキシコに自社で直接輸入することで、米国の関税政策の影響を受けにくくなり、安定した価格で顧客に商品を提供できるだろう」とコメントした。
バイヤー招聘(しょうへい)事業で訪問した武勇酒造(茨城県結城市)で試飲する西側氏(一番右)(エンカウンター・ジャパン提供)
(注1)日本の輸出酒類卸売業免許は2024年6月に、メキシコの酒類輸入免許は2025年2月にメキシコのグアナファト州で取得した。
(注2)主要な水産物の1つホタテが中国で加工できなくなったことを受け、メキシコはその代替加工地として注目された。詳しくは2024年4月11日付地域・分析レポート参照。
(志賀大祐)
(日本、メキシコ、米国)
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