連邦憲法擁護庁が連邦議会第2党のAfDを右翼過激派団体に認定
(ドイツ)
ベルリン発
2025年05月08日
ドイツの情報機関である連邦憲法擁護庁は5月2日、政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を、人間の尊厳を軽視し過激主義的な思想を持つことから、右翼過激派団体であるとの認定を下した(プレスリリース)(注)。同庁は、AfD内で支配的である民族主義・血統主義的な考え方は、自由民主主義の基本秩序と両立せず、また同党は特定の集団を平等な社会参加から排除し、憲法に反する不平等な扱いを受けさせ、法的に低い地位に追いやろうとしていると断じた。
AfDは、2月23日の連邦議会選挙で20%以上得票し(2025年2月26日記事参照)、特に東ドイツで高い支持率を得ている。最新の世論調査では、さらに支持率を23%に上げている(公共放送局「ZDF」5月2日)。今回の連邦憲法擁護庁による評価が政党禁止に直結するわけではないが、現地報道によると、当局の監視強化につながる可能性はあるとされている。
連邦憲法擁護庁の認定に対し、AfDは、民主的な意思形成プロセスを標的とした政治介入であるとして強く反発している。同党は5月5日に、ケルンの行政裁判所において連邦憲法擁護庁に対する訴訟を提起、右翼過激派としての評価やそれに基づく監視行為などを禁じるよう求めている。
今回の右翼過激派団体認定を受け、連邦議会議員のジークハルト・クノーデル氏は5月5日付でAfDを離党、今後は超党派議員として活動していくことを明らかにした。
報道によると、キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ首相は、本件について「AfDの連邦議会議員が連邦議会委員会の委員長を務めることは考えられない」と語った。社会民主党(SPD)党首のラース・クリングバイル氏は「わが党のいかなる役職にある者に対しても、AfDに投票することを勧めない」と、メルツ首相よりさらに強い言葉でAfDとの協力の可能性を否定した(ドイツ公共放送ARD「ターゲスシャウ」5月5日)。
(注)連邦憲法擁護庁は、憲法に反する可能性のある活動を、3つのカテゴリーに分類。「調査対象案件」「疑わしい案件」「確固たる極右的傾向」と、順を追うごとに調査の対象範囲および監視活動、情報収集手段が広がる。第2段階から、連邦憲法擁護庁は当該団体を監視し、情報提供者の活用が可能なほか、特定の条件下では通信を監視することもできる。しかし、監視行為は監視対象者の基本権を侵害することから、監視措置は必要かつ適切でなければならないとされている。第2段階と第3段階では同じ手段が利用可能だが、後者ではこれらの手段を講じることがより容易になるという。
(打越花子、中山裕貴)
(ドイツ)
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