米国税関の貨物セキュリティーサミット開催、FDAは輸入審査に生成AIの活用も

(米国)

ロサンゼルス発

2025年05月13日

米国税関・国境警備局(CBP)は2025年5月6~8日、ルイジアナ州ニューオリンズで2025年貿易・貨物セキュリティーサミット(TCSS)を開催した。外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますCBP職員、貿易関係者、政府機関関係者らが登壇し、国際貿易イニシアチブや貨物の輸入に当たる税関でのプログラムについて議論が行われた。

米国では、関税免除が適用となる小口貨物(以下、デミニミスルール)による貨物の増加が課題で、2019年の5億1,100万件に対し、2025年は5月までに7億7,800万件に増加したとの報告があった。デミニミスルールの貨物は薬物の密輸に悪用されることが多く、2024年度に押収された麻薬の98%がデミニミスルールを利用していたと報告された。特に越境EC(電子商取引)による小分け配送利用が多い中国に対し、適用停止を2025年5月2日から施行した(2025年4月4日記事参照)ことで、デミニミスルールを使用した輸送量は5月6日までの4日間で85%減少した。

米国土安全保障省のトロイ・エドガー副長官は「ドナルド・トランプ大統領は、特に中国に対して、関税を利用して米国の立場を改善しようとしているが、新関税の発効前に貨物の輸入が急増したことから、関税による影響の全体像はまだ明らかではない」と述べた。

FDAは輸入審査に生成AIツールを活用

同サミットで米国食品医薬品局(FDA)は、水際での旅客や貨物の審査に生成人工知能(AI)を活用すると発表した。すでにFDAは輸入要件を満たしていない貨物の洗い出しに生成AIの活用を開始、リスクが高い貨物をより高い精度で特定することに成功している。同時にFDAは、輸入審査に必要な多くのデータを収集している。例えば、水産品の中でも特に輸入量が多いエビについては、主要相手国であるエクアドルと2023年8月に規制パートナーシップ協定(RPA)を締結した。これは、エビの養殖時の監視システムにおけるデータ・情報が米国側に提供され、FDAは入港時の食品安全を強化するもの。同様に、主要輸入相手国であるインドネシアなどとも連携し、米国への出荷前に養殖・加工に関する情報を得て、リスクがある場合には、出荷前に差し止めることも可能としている。他の食品や製品に対しても、セキュリティーを強化しつつ多様な情報をAIに分析させ迅速な判断を行うとしている。

(サチエ・ヴァメーレン)

(米国)

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