オーストラリア、米国への信頼感は過去最低、関税政策に反対多数
(オーストラリア、米国)
シドニー発
2025年04月28日
米国のドナルド・トランプ政権の方針や政策により、オーストラリア国民の米国に対する信頼の低下や国内産業界への影響が懸念されている。シドニーを拠点とする国際経済・政治シンクタンクのローウィー研究所(Lowy Institute)は4月16日に、トランプ大統領の政策に対する反応、米国への信頼感などに関する世論調査の速報結果(注)を発表した。
同調査では、米国を「非常に」または「ある程度」信頼していると回答した割合が36%と、前年調査より20ポイント低下した。同研究所では過去20年間にわたり同項目を調査しているが、今回は過去最低の割合を記録した。一方で、オーストラリアの安全保障の観点での米国との同盟を重視する傾向は、例年と変わらず、80%が「非常に」または「かなり重要」と回答した。
また、トランプ大統領の政策に対して反対多数だったものは、「デンマークに対し、自治領であるグリーンランドを米国に売却または引き渡すよう圧力をかける」(反対89%)、「トランプ大統領の狙いを達成するため、関税賦課を利用して他国に圧力をかける」(同81%)、「世界保健機関(WHO)からの米国の脱退」(同76%)が続いた。
米国のオーストラリアからの輸入の8割が相互関税対象、医薬品への関税に懸念
トランプ政権は4月5日、オーストラリアに対して10%の相互関税を課した。ジェトロが米国大統領令の付属書2の輸入額を米国の貿易統計(通関ベース)を基に調べたところ、米国のオーストラリアからの輸入に占める相互関税対象外品目の比率は、金額ベースで19.7%にとどまり、大部分が相互関税の対象となる(添付資料表参照)。輸入品目の1位は牛肉(切り身、骨なし、未加工、冷凍)(HTSコード2023050、シェア9.8%)で、相互関税の対象品目となっている。ただ、10%の関税が上乗せになっても米国製品よりも価格が安いため、米国市場においてオーストラリア産牛肉は、引き続き競争力があると業界は見ている。
また、相互関税対象外品目のうち1位は医薬品で、抗血清・血液その他(HTSコード30021200、シェア7.1%)だった。トランプ政権は医薬品への関税を検討(2025年4月15日記事参照)しており、オーストラリア国内製薬業界への影響が懸念されている。オーストラリア外務・貿易省の貿易統計(2024年10月発表)によると、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の貿易額において、米国は5番目の輸出国だ。そのうち、米国への医薬品輸出は約16億オーストラリア・ドル(約1,440億円、豪ドル、1億ドル=約90円)で、米国への全輸出のうち7.4%のシェアを占めている。
(注)同研究所は3月3日から16日まで、オーストラリア国内2,117人を対象に世論調査を実施した。調査結果の最終版は2025年6月に発表される予定。
(青島春枝)
(オーストラリア、米国)
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