米追加関税による影響、インド国内では経済の減速に憂い
(インド、米国、日本)
調査部アジア大洋州課
2025年04月28日
米国のドナルド・トランプ大統領が4月2日(米国東部時間)、米国の貿易赤字額が大きい国・地域に対し、「相互関税」を課すと発表したことを受け、インド国内では経済成長の減速を懸念する声が上がっている。インドに対しては、4月5日からベースライン関税10%が課され、4月9日からそれを26%に引き上げる相互関税が適用される予定だった。ただし、相互関税の適用は現在、90日間停止されている(2025年4月7日記事、2025年4月11日記事参照)状況下、インド財務省のエージェイ・セス次官は「米国の追加関税の直接的な影響として、インドの経済成長率が0.2~0.5ポイント程度縮小すると予測する」と述べた(「エコノミック・タイムズ」紙4月23日)。
また、インドと米国の貿易状況について、統計上は米国の貿易赤字となっているものの、インドが自由化を進めれば国内の農家や小売業の中小零細企業が強大な米国企業との競争を強いられるため、非関税障壁の撤廃や関税率について貿易額の単純比較で語るべきできないとの論調も見られる(「ニュー・インディアン・エクスプレス」4月27日)。
在インド日系企業からは、間接的な影響を懸念する声も聞かれる。ジェトロが複数企業に聞いたところ、米国の追加関税による自社事業への直接的な影響は不明との声が多かったが、「世界経済が鈍化することで、インド経済の成長が減速し、内需に影響が及ぶのではないかと懸念している」といった複数社からの声や、「(投資規制により、インド市場への中国企業の進出は限定的であるものの)中国企業が生産地変更を余儀なくされることでインドへの進出が進み、インド市場における競争が激化するのではないか」といった声が聞かれた(調査日:4月16~18日)。
(深津佑野)
(インド、米国、日本)
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