トランプ米大統領、労働者不足解消のため、支援プログラム見直しを指示する大統領令発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年04月30日

米国のドナルド・トランプ大統領は4月23日、「米国人の未来の高賃金技能職に備える」と題する大統領令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、ファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも同日公開した。連邦政府の労働力開発プログラムを全て見直し、現代化、統合、再編成することで、新興産業での労働力確保を目指す。

今回の大統領令は「米国の再工業化と経済成長への歴史的な投資の効果を最大化するため、米国人労働者が世界最高水準の製品を生産し、世界最先端の技術を実装する能力を完全に備えるよう支援する」「断片化した連邦政府の労働力開発プログラムを統合し、効率化を図る」ことを目的としている。その上で、大きく次の2つを指示する内容となっている。

1つは「包括的な労働者への投資と開発戦略」で、労働長官、商務長官、教育長官に対して、全ての連邦の労働力開発プログラムを審査し、大統領補佐官(国内政策担当)と行政管理予算局(OMB)局長に、発令日から90日以内に報告書を提出するよう指示している。報告書には、将来的に米国に投資する新興産業や企業の労働力ニーズに対応できるよう、労働開発システムとリソースの再配分、効果的ではない労働開発システムに関する支出、人工知能(AI)の活用を含む既存従業員のスキル向上への投資機会、4年制大学の学位の代替となる資格や評価方法を特定する戦略などを明記するよう指示している。効果的でないシステムについては、プログラムの改革、資金の再配分、廃止に関する提案も求める。

もう1つは登録実習プログラム(Registered Apprenticeship Program、注1)の拡大で、労働長官、商務長官、教育長官に対して、新たに100万人超が実習する計画を大統領補佐官(国内政策担当)とOMB局長に、発令日から120日以内に提出するよう指示している。

トランプ政権は製造業の米国回帰を主要な政策目標の1つに掲げている。首都ワシントンの政策動向などに詳しい専門家によると、同政権は規制緩和、世界一律の10%のベースライン関税(注2)、トランプ減税の延長の3本柱で、米国内への製造業回帰を目指しているという。他方で、労働統計局(BLS)は、今後10年間で技能労働者が年間50万人不足し、その不足数は年々増加すると予測している。ジェトロの在米日系企業へのアンケートでも、人材不足が深刻と述べる日系企業は多く、特に工場作業員では、「やや深刻」「とても深刻」との回答は合わせると75.5%に達する。こうした施策が今後の米国の労働者不足を解消できるか、具体的な措置の発表が待たれる。

(注1)業界主導型の教育訓練制度で、企業の将来の労働力の教育訓練、労働者の実務経験・資格取得を支援するもの。

(注2)トランプ氏は4月2日、全ての国から輸入される実質的に全ての品目に10%の追加関税を課すベースライン関税と、米国との貿易赤字額が大きい国・地域に対し、より高い追加関税率を課す相互関税を発表した(2025年4月11日記事参照)。このうちベースライン関税は米国内製造業回帰を目的に、相互関税は相手国・地域の関税・非関税障壁を削減する目的があると指摘されている。

(赤平大寿)

(米国)

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