英政府、清涼飲料水産業税の課税対象拡大へ

(英国)

ロンドン発

2025年04月30日

英国歳入関税庁は4月28日、清涼飲料水産業税の課税対象の拡大について意見公募を開始外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(7月21日締め切り)。清涼飲料水産業税は政府の肥満対策の一環で、2018年4月から導入した(2025年4月28日付地域・分析レポート参照)。現行制度では、100ミリリットル当たり5グラム以上8グラム未満の砂糖(注1)を含む清涼飲料水に1リットル当たり19.4ペンス(約37円、1ポンド=100ペンス=約191円)、8グラム以上の砂糖を含む清涼飲料水に25.9ペンスの税金を課し、製造業者や輸入業者から徴収している(注2)。

英国政府は、これまでの清涼飲料水産業税の導入によって、清涼飲料水の砂糖含有量が46%減少したと評価しており、今回の意見公募では、清涼飲料水からの砂糖摂取をさらに削減することを目指し、次のような案を示している。

  • 清涼飲料水産業税が適用される下限値を100ミリリットル当たり糖分総量5グラムから4グラムに引き下げ
  • 乳飲料、乳代替飲料の免除を廃止。ただし、乳成分に含まれる天然の糖分を考慮して「乳糖控除」を導入

これらについて、意見公募を経て、2027年4月1日に施行するとしている。

約900商品の清涼飲料水を新たに課税対象に

英国健康・改善格差局は同じ4月28日、英国で販売されている清涼飲料水、乳飲料、乳代替飲料の砂糖含有量の調査結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これによると、清涼飲料水(乳飲料、乳代替飲料を除く)3,181商品のうち、現行制度で課税対象の100ミリリットル当たり5グラム以上の砂糖を含む商品は606商品、新たに課税対象となる4グラム以上5グラム未満の砂糖を含む商品は866商品(売り上げシェア16.6%)。これまで、大手飲料メーカーは課税を回避するため、5グラムをわずかに下回る商品を開発してきており、影響を受ける商品は少なくない。乳飲料についても、238商品のうち5グラム以上の砂糖を含む商品が203商品(売り上げシェア93.0%)あり、多くの商品が課税対象となる見込みだ。

英国清涼飲料協会は翌29日、「今回の決定は、混乱と破壊をもたらすゴールポストの変更であり、長年にわたる配合変更への投資を無駄にするおそれがある。健康への効果も疑問視されている」とのコメントを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

(注1)「砂糖」には、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース(乳糖)、ガラクトースなどが含まれ、ステビア、アスパルテーム、スクラロースなどの代替甘味料は含まれない。

(注2)導入時はそれぞれ1リットル当たり18ペンス、24ペンスだったが、4月から物価上昇を反映して引き上げられた。

(林伸光)

(英国)

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