3月の物価上昇率が前月比3.7%と加速、新たな為替政策の影響に注目

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2025年04月17日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は4月11日、3月の消費者物価指数(CPI)上昇率外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが全国平均で前月比3.7%だったと発表した。前月の2.4%から加速した。前年同月比(年率)の上昇率は55.9%だった(添付資料図参照)。

前月比の上昇率を項目別にみると、季節によって価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスが8.4%で大幅に加速したほか、季節変動要因のある品目を除いたコアインフレ率や、エネルギーや公共サービスなどの価格が規制されている財・サービスは、それぞれ3.2%だった。

前月比の上昇率を費目別にみると、平均値を上回ったのは教育の21.6%、食品・飲料(酒類を除く)の5.9%、衣類・靴類の4.6%、外食・ホテルの3.9%だった(添付資料表1参照)。INDECによると、教育の大幅な加速は新学期の開始が影響した。また、CPIに占める比重が大きい食品・飲料(酒類を除く)では、食肉の価格が前月に続いて大きく上昇したほか、2月以降の多雨が農作物の生産に影響し、果物・野菜の大幅な値上げがあった。

ジェトロが独自に調査した首都ブエノスアイレスの4月14日時点の品目別の物価をみると、牛肉、鶏肉、鶏卵の価格上昇、燃料や公共交通機関料金の上昇・値上げがあった一方、値下げをしている製品も多くみられた(添付資料表2参照)。

3月は季節の変わり目で、物価は上昇すると見込まれており、中央銀行が民間エコノミストらを対象に毎月実施する主要マクロ経済指標の予測値に関するアンケート調査の最新結果では、中央値2.6%を大きく上回った。今後の見通しについては、政府が4月11日に発表した資本取引規制の解除(2025年4月16日記事参照)への為替市場の反応が影響するとみられる。複数のエコノミストらによると、資本取引規制の解除直後は、いったん通貨安が起こり、その後は徐々に為替市場が落ち着いていく可能性が高い。通貨安が一時的に物価を押し上げ、4月のCPI上昇率は4%以上になるとの分析がある一方、3%前後となるとの見方も多い。

ハビエル・ミレイ大統領は資本取引規制の解除が発表された11日夜、国民に向けたテレビ演説で「われわれの政策は裏付けのない通貨発行を永久になくすことが目的だ。インフレは遅かれ早かれ消滅する運命にある」と述べた。4月14日の対米ドル公式為替レートは1ドル=1,230ペソで、11日比では12.07%下落した。他方、並行レート(ブルーレート)は1,375ペソから1,285ペソに上昇し、乖離幅は縮小した。

(注)アルゼンチンには、自国から米国向けに輸出する実質的に全ての品目に、米国側で10%の追加関税を課す世界一律のベースライン関税が課されているが、相互関税の対象にはなっていない。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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