TSMC欧州合弁会社社長、プロジェクト概要を紹介、台湾や日本との連携を強調
(ドイツ、台湾)
ベルリン発
2025年04月17日
半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)がドイツとオランダの企業と立ち上げた合弁会社ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)の社長のクリスティアン・コイッチュ氏は4月9日、同社工場の建設が進んでいるドイツ・ザクセン州で開催された半導体産業に関する国際ビジネス会議のセミナーに登壇し、ESMCのプロジェクト概要を紹介した(2024年8月29日記事参照)。
セミナーで講演するESMCのクリスティアン・コイッチュ社長(ジェトロ撮影)
2027年末の生産開始に向け、工場の建設はおおむね順調に進んでいると説明し、年間48万枚のウエハーを生産できる設計で、約19億ユーロの収益を見込んでいるという。工場のフル稼働時には2,000人近いハイテク専門職の直接雇用を見込んでいる。このプロジェクトにより、欧州の半導体産業や同関連企業のサプライチェーンのレジリエンスを向上させると語った。
また、ESMCは工場建設やその後の生産に向けて、台湾や日本とも連携していると紹介した。技術者養成のため、ESMCから台湾の台中市にあるTSMC新人研修センターに社員を派遣している。同センターの指導者は平均15年以上の経験を有しており、新人に必要不可欠な技術を身に着けさせるとともに、熟練技術者向けには上級コースも用意してある。このほか、地元のドレスデン工科大学と共同で、TSMCでの実地研修も組み合わせたインターンシップも実施し、現在2期生を派遣中だ。ESMCの工場稼働に向け、TSMCの持つ技術や経験を最大限に活用する考えを示し、また、日本の熊本での工場建設で培ったノウハウを欧州工場建設に生かすため、欧州工場から熊本の工場に派遣団を送ったという話も紹介した。
インフラ整備が進むも、住宅供給が課題
ザクセン州ドレスデンは、欧州最大級の半導体集積地として知られ(2024年12月13日付地域・分析レポート参照)、TSMCのほか、ドイツ半導体大手インフィニオン・テクノロジーズも工場を建設中だ(2025年3月10日記事参照)。これらを受けて、地元自治体は工業用水の供給強化や、工業団地へのトラム延伸など、インフラ整備を進めている。
2027年末の稼働に向け建設が進むESMCの工場予定地(ジェトロ撮影)
一方、地元メディアからは、ドレスデンの住居不足を問題視する声も聞かれる。半導体工場の建設や拡張が進められ、今後数年間で数千人の雇用が創出されるという見込みもあり、業界関係者によると、1万戸のアパートが必要となるが、住宅建設は不透明という。建設費も高騰しており、新しく建設する物件ではコスト吸収のため1平方メートル当たり20ユーロの家賃設定が必要となる。これに対し、現在の周辺の家賃相場は低めで、同8~12ユーロで借りられる物件もあり、将来の需要を見越した新規建設が進んでいないという。
(中山裕貴)
(ドイツ、台湾)
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