トランプ米政権の世界共通関税・相互関税、米国内でも経済影響を懸念する受け止めも

(米国)

ニューヨーク発

2025年04月04日

米国のドナルド・トランプ大統領は4月2日、世界共通関税と相互関税を課す大統領令を発令した(2025年4月3日記事参照、注1)。米国内では、同措置を歓迎する意見がある一方、追加関税が米国経済にマイナス影響を及ぼす可能性を懸念する声も上がっている。

ホワイトハウスは同日、米国内の業界団体、連邦議会議員、シンクタンクなどのコメントをまとめた文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これによれば、全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は「トランプ大統領は米国産牛肉の輸出を妨げる数々の貿易障壁に対処するための措置を講じた」と述べたほか、ビル・キャシディ上院議員(共和党、ルイジアナ州、注2)は「トランプ大統領の通商政策は、より有益な貿易取引、公正なルール、具体的な成果の創出に向けた道筋を拓くものだ」と述べ、トランプ政権の関税措置を支持した。また、首都ワシントンの保守系シンクタンクの米国第一主義研究所(AFPI)は「トランプ政権下で関税は雇用を復活させ、インフレを緩和し、国家安全保障を強化してきた」と述べ、関税措置の米国経済・国家安全保障への有用性を主張した。

一方、米国商工会議所は4月2日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「米国のあらゆる規模の企業や業界からわれわれが耳にしているのは、これらの大規模な関税は増税と同じで、米国の消費者の負担を増加させ、経済に打撃を与えるという声だ」と産業界の受け止めを総括し、トランプ政権に対して、関税政策ではなく、減税や規制緩和などの政策に焦点を当てるよう訴えた。

米国の無党派シンクタンクのタックス・ファウンデーションは4月3日、トランプ政権の関税政策の米国経済影響に関する試算結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを更新した。これによれば、世界共通関税と相互関税の賦課によって、米国のGDPは0.5%減少し、米国で45万8,000人相当の雇用が失われる。鉄鋼・アルミニウム製品や自動車・同部品の米国輸入に対する232条関税(注3)、中国原産品の米国輸入に対する国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく20%の追加関税(注4)の影響も加えれば、米国のGDPは0.8%減少し、米国で66万9,000人相当の雇用が失われると試算した。また、「過去の事例では、関税は物価を上昇させ、所得・GDP・雇用を減少させてきた」と指摘した。

(注1)世界共通関税は、全貿易相手国の全品目の米国輸入に対して、4月5日から10%の追加関税を課す。相互関税は、日本を含めた57カ国・地域の全品目の米国輸入に対して、4月9日から個別に設定した追加関税を課す(例えば、日本に対しては24%の相互関税を課す)。相互関税は世界共通関税に上乗せされない。1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象品目(大統領令付属書2参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))や「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の原産地規則を満たすメキシコ・カナダ原産品(2025年3月7日記事参照)などに対しては、世界共通関税と相互関税は課されない。

(注2)キャシディ氏は、2021年の議事堂襲撃事件を契機としたトランプ氏に対する弾劾決議に賛成票を投じた共和党議員の1人だった。

(注3)鉄鋼・アルミ製品に対する232条関税は、2025年3月17日記事参照。自動車・同部品に対する232条関税は、2025年4月3日記事参照

(注4)中国原産品に対するIEEPA追加関税は、2025年3月4日記事参照

(葛西泰介)

(米国)

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