シンガポールと米国、貿易交渉で解決策追求へ
(シンガポール)
シンガポール発
2025年04月30日
シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は4月27日、米国のハワード・ラトニック商務長官と同月25日に電話会談を行い、10%の基本関税は長期的な措置であり、交渉の対象にはならない可能性を伝えられたと述べた。一方で、ラトニック商務長官が「両国間の貿易関係強化のためにも、重要な輸出入品に関しては、クリエーティブな解決策を追求する」との考えを伝えたことを明らかにした。
両国間には2004年1月から自由貿易協定(FTA)が発効している。しかし、シンガポールは他国と同様に、米国による10%の基本関税の対象とされた(2025年4月7日記事参照)。ガン副首相は米国が輸入医薬品への関税を検討していることに言及した。シンガポールの対米輸出の10%以上を医薬品が占めるため、「米国からどのようなかたちで譲歩を引き出せるか、交渉中だ」と述べた。
また、ガン副首相は、人工知能(AI)向けの高性能半導体チップの輸出規制強化で「米国がシンガポールと協力する用意があるとラトニック商務長官が伝えた」と説明した。シンガポールが今後も高性能半導体を確保することは、データセンターや高性能のコンピューティング能力を必要とする事業や、シンガポールに拠点を置くグーグルやアマゾン、マイクロソフトのような企業にとって重要だと強調した。電話会談で両国は今後も早期の解決に向けた交渉を継続することで一致した。
米国との関税交渉、シンガポールに複数の選択肢も
一方、チー・ホンタット運輸相兼第2財務相は同日、5月3日投開票の総選挙に向けた野党との討論会で、米国との関税交渉でのシンガポールの姿勢を聞かれ、「米中いずれかを選択するのではなく、双方にとって必要不可欠で信頼のある国であり続ける」と語った。その上で、チー運輸相は「米国は引き続きアジアとの関係を維持してほしい」と述べた。さらに、シンガポールが小国でも新たな貿易相手国との間で貿易関係を確立するなど、複数の選択肢があることを示す重要性を指摘し、「(ドナルド・)トランプ大統領のような厳しい交渉者は、交渉相手に選択肢がないと知った場合には、追及が激しいものになる」との考えを示した。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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