シンガポール副首相、米国の10%関税に失望、対抗措置は導入せず

(シンガポール)

シンガポール発

2025年04月07日

シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は4月3日の会見で、米国が前日の2日にシンガポールに対し、10%のベースライン関税を課すと発表したことに、失望を表明した。しかし、今回の関税措置に対し、対抗措置を取らない方針を示した。

シンガポールと米国との間には、自由貿易協定(FTA)が2004年1月に発効している。ガン副首相は、米国がこれまで20年以上にわたって対シンガポール輸出で無関税を享受し、「米国は300億ドルもの貿易黒字を得た」と指摘した。しかし、同副首相は今回、同FTAに基づく対抗措置を取らない理由について、「米国からの輸入品に課税すれば、輸入コスト負担が増え、(シンガポールの)消費者や企業に影響を及ぼす」と説明し、代わりに米国の懸念を払拭するためにも対話を重ね、米国と長期的な関係を築くべく、建設的に協力する考えを示した。

シンガポールに課される10%の関税率は、東南アジア諸国の中では最も低い税率となる。ただ、同副首相は「10%の関税がシンガポール経済に多大なインパクトを与える」と述べた上で、経済成長の公式予測を今後見直す可能性も指摘した。貿易産業省は2024年11月、2025年のGDP成長率を「1.0~3.0%」と発表していた。同副首相は、各国が米国に報復関税を導入し、世界的な貿易戦争となれば、国際経済が大きく減速する恐れを指摘し、、その場合には「中長期的なシンガポール経済の見通しに影響を与える」と語った。

米国商工会議所の調査、約7割の会員企業が米関税でマイナスの影響

一方、シンガポール米国商工会議所(AmCham)は4月2日、会員企業を対象としたアンケート(回答企業36社)で、米国の関税で「極めてマイナスの影響」を受けると答えた企業が5社、「中程度のマイナスの影響」が20社と、合計で約7割に上った(注)。関税の「影響がない」と答えた企業は7社だった。また、関税への対応については「消費者にコストを転化する」とした企業が16社と最も多く、次いで「他地域へとサプライチェーンを多角化する」が13社、「市場シェアを拡大すべく、戦略的なポジションをとる」が11社だった(複数回答)。

(注)調査は3月3~10日に実施。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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