ニューメキシコ州・ワイオミング州は「米国のエネルギーの供給源」、エネルギー産業を中心とした魅力を両州の知事が語る
(米国)
調査部米州課
2025年04月24日
ジェトロは4月23日、米国西部エネルギー・ビジネスセミナーを東京で開催し、ニューメキシコ(NM)州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事(民主党)やワイオミング(WY)州のマーク・ゴードン知事(共和党)らが登壇した。会場には、米国でのビジネス展開に関心を寄せる日本企業の関係者など約100人が詰めかけた。
開会あいさつでジェトロの石黒憲彦理事長は、両州は石油や液化天然ガス(LNG)などの豊富な天然資源を背景に、エネルギー分野を中心に産業集積が進むと紹介。さらに、米国大都市圏と比較して安価な事業コストと、天災リスクの小ささを強みとして挙げ、「両州への進出にあたっては、州政府との連携が重要」と強調した(注1)。
基調講演には、グリシャム知事およびゴードン知事が登壇した。両知事ともに、両州が米国においてエネルギーの供給源として重要な役割を果たしていることを説明。グリシャム知事は、太陽光発電プロジェクトや二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の推進などエネルギー分野での先進的な取り組みについて語った。さらに、量子技術や原子炉プロジェクトといった、次世代技術における研究開発拠点が集積する点も両州に共通する魅力として挙げた。
講演するNM州のグリシャム知事(ジェトロ撮影)
また、ゴードン知事は、両州は米国のほかの州と比べて、企業が州政府にアプローチしやすく、企業の依頼に対して迅速な対応が可能だと力説。両州政府のエネルギー分野支援への意欲的な姿勢とともに、充実した支援体制を積極的にアピールした。
講演するWY州のゴードン知事(ジェトロ撮影)
NM州政府経済開発省長官のロブ・ブラック氏は、米国1位を誇る人口1人あたりの博士号取得者の割合や充実した教育支援制度から生み出される質の高い労働力、州内の外国貿易地域(FTZ、注2)の存在、米国最大級の貿易港であるカリフォルニア州ロサンゼルス港とテキサス州ヒューストン港の中間に位置する優れた立地など、同州のビジネス環境の強みについて述べた。
一方、WY州エネルギー庁のロブ・クリーガー氏は、米国1位の生産量を誇る石炭や希少資源であるレアアースやウランといった州内に埋蔵する多くの天然資源や、エネルギー分野における規制緩和をビジネス環境上の利点として挙げた。
セミナーでは、両州に進出する日系企業2社の講演も行われ、ビジネス環境の優位性について述べた。半導体に使用するシリコンウェハーを製造するSUMCOの高岡暢光氏は、NM州アルバカーキで工場の操業を開始して以来、税制優遇措置や従業員の賃金補助など州政府による豊富なインセンティブを活用していると話した。
さらに、川崎重工業の奥村雄志氏は、同社で米国初となるCO2分離回収実証事業に関し、施設の建設に伴うWY州企業との連携や、私有地への環境影響評価装置の設置の際に、地権者との交渉でWY州政府から受けた支援などについて語った。
(注1)ジェトロは、米国への進出や拠点拡大時、州政府などと連携した工場設立や研究開発拠点の設立の米国立地選定支援サービスを提供している。
(注2)通関規制や関税に対する優遇措置が与えられる地域を指す。同地域では、関税の優遇・猶予・免除を受けられるとともに、製品の保管、取り扱い、展示、製造、廃棄が可能。国内にあっても、関税面では米国外と見なされ、関税や特定の手数料が免除される。
(小谷田浩希)
(米国)
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