フランス、国家水素戦略を改定、容量目標を下方修正

(フランス、EU)

パリ発

2025年04月28日

フランス政府は4月16日、2020年に発表した国家水素戦略(2023年6月26日付地域・分析レポート参照)を、脱炭素水素(注)の市場拡大の遅れを理由に見直した。改定された「2025年国家脱炭素水素戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(フランス語)では、脱炭素水素セクターの創生に向け、総額90億ユーロの当初予算を2030年までに投入する方針を確認しつつ、脱炭素水素製造設備の設置目標を従来の6.5ギガワット(GW)から4.5GWに引き下げ、2035年の目標値を8GWに設定した。

今回発表された戦略では、脱炭素水素の利用が優先される分野を製造業(特に石油精製や化学産業)と大型輸送(特に航空や海運)と捉え、同分野に重点を置いた新たな支援メカニズムが導入された。

具体的には、製造業向け脱炭素水素の生産プロジェクトに約40億ユーロの予算を割り当て、合計1GWの電解容量の設置を支援する。また、北部ダンケルク、南部フォス=マルセイユ、西部ル・アーブル=セーヌ河口を含む5つの主要工業地帯に脱炭素水素の生産・消費拠点となる水素ハブを設置し、2030年までにこれらのハブと貯蔵施設を500キロのパイプラインで接続する。

大型輸送分野では、「輸送分野における再生可能エネルギー利用促進に関わる優遇税制(TIRUERT)」の脱炭素水素への適用を推進することで、合成燃料の生産拡大を支援する。政府はまた、EUの水素分野における欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI、2024年5月29日記事参照)に選定された大規模なパイロットプロジェクトの立ち上げについて支援を続ける方針を強調した。

脱炭素水素の輸入については、2035年以降、航空や海運の合成燃料の需要が増加し、国内製品より外国製品が競争力を持つ場合にのみ、検討する方針だ。輸入品には合成燃料のほか、アンモニア、メタノールなどが含まれる。長期的にはイベリア半島など近隣地域からのパイプラインを通じたガス状水素の輸入を計画しているが、液体水素の海上輸送による輸入は現時点では検討していないと説明した。

政府はまた、同戦略の中で、フランス国内の天然水素資源の探査を南西部ピレネー=アトランティック県で開始したことを明らかにした。

政府が国家水素戦略を改定したことに対し、水素エネルギー関連企業や業界から歓迎の声が上がっている。水素エネルギー産業の業界団体であるフランス・イドロジェーヌのフィリップ・ブクリ会長は4月16日、「改定された国家水素戦略は、業界関係者や投資家に構造的かつ安心できる枠組みを提供するものだ」と評価した。

(注)低炭素水素と再生可能エネルギー由来の水素の総称として、フランス政府の国家戦略やプレスリリースで使用されている。

(山崎あき)

(フランス、EU)

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