トランプ政権が始まり、中国念頭に置いた措置始まる、ジェトロの米中月例レポート(2025年2月)

(米国、中国)

調査部米州課

2025年04月03日

ジェトロは3月31日、米国の対中国関連政策についてまとめた2025年2月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

トランプ政権発足後約1カ月半が経過した2月末の時点で、米中政府間のハイレベルの直接対話は電話会談にとどまった。

2月には、ドナルド・トランプ大統領が就任した1月20日直後に発表された優先政策課題について(2025年1月22日記事参照)、大統領令、大統領布告、大統領覚書などを通じて、具体的な行政措置が立て続けに発表された。

まず中国を対象とした措置として、同国で違法に製造された合成麻薬フェンタニルなど麻薬性鎮痛薬が米国に流入していることを理由に、2月4日から中国原産品に対して、既存の関税に10%を上乗せした。1カ月後には税率を20%に引き上げている(2025年3月4日記事参照)。2月21日には米通商代表部(USTR)が中国の海事・物流・造船分野に対する1974年通商法301条に基づく措置の内容案を発表した(2025年2月25日記事参照)。このほか、中国への明示的な言及はないものの、中国を念頭に置いた行政措置としては、鉄鋼・アルミの輸入に対する追加関税に関する大統領布告(2025年2月12日記事参照)、相互関税の賦課に関する大統領覚書(2025年2月14日記事参照)、国家エネルギー優位評議会設置に関する大統領令、銅輸入への対処に関する大統領令(2025年2月26日記事参照)などがある。中国に関連するこれらの行政措置の基本的な方向性は、第1次トランプ政権やバイデン前政権の方向性から大きな変化はない。ただし、第1次トランプ政権とバイデン前政権が関連法で規定した手続きに従って、公聴会やパブリックコメントなどの意見聴取の機会を設けながら、最終的な決定をしたり、適用除外を認めたりしていたのに対し、第2次トランプ政権は大統領権限を最大限に利用するかたちで、措置を発表後に即刻施行しようとすることが特徴的だ。

中国に関連する経済制裁や輸出管理では、政策の方向性を決め、具体的な措置を講じる権限を有する財務省や商務省の政策担当の高官が正式に就任していなかったこともあり、トランプ政権としての基本方針を示す対外発表はみられなかった

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧できる。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(谷本皓哉)

(米国、中国)

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