カナダの3月の雇用数は前月比3万2,600人減、失業率は6.7%に

(カナダ、米国)

トロント発

2025年04月09日

カナダ統計局が4月4日に発表した2025年3月の雇用統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、雇用者数は前月比3万2,600人(0.2%)減少の2,096万1,900人で、2022年1月以来の減少となった。就業率(15歳以上の人口に占める就業者数の割合)は前月比0.2ポイント減の60.9%、失業率は0.1ポイント上昇の6.7%で、2024年11月以来の上昇を記録した。

統計局は、雇用者数は2024年後半の強い増加傾向から、2025年1~2月は安定で推移していたものの、3月はフルタイム雇用(注)の減少(6万2,000人減、0.4%減)がみられたと説明している。業種別では、卸売・小売業(2万8,500人減、1.0%減)や情報・文化・娯楽(2万3,000人、2.4%減)が減少したのに対し、公共サービス(4,200人増、2.8%増)と、「その他のサービス」に分類される個人・修理サービス(1.5%増)で増加がみられた。地域別では、ブリティッシュコロンビア州(5,700人増、0.2%増)などで雇用の増加がみられたものの、オンタリオ州(2万7,500人減、0.2%減)をはじめとした、人口の多い州で大幅な雇用の減少がみられたことで、全国的な減少につながった。

失業者数は、前月比3万6,000人(2.5%)増加で150万8,800人となった。「過去12カ月以内の解雇による失業」が最も多く44.1%で、この失業者のうち、最後に従事していた業種の中で最も多かったのは、建設業(18.4%)と卸売業または小売業(12.4%)だった。また、2月に失業していた求職者のうち、3月に就職した人は14.7%で、2024年3月(18.6%)と比べて低い割合となり、27週間以上職を探している失業者の割合も前年同月の18.3%から5ポイント以上も高い23.7%に上昇していることから、再就職が一層困難な状況、と分析した。

この発表を受け、トロント・ドミニオン銀行の調査部門TDエコノミクスのディレクター兼シニアエコノミストのジェームズ・オーランド氏は、米国による関税の影響が経済全体に及んでいると推測し「失業した人々は仕事を見つけるのに長時間かかっており、これは関税の導入を受けてカナダの労働市場が緩み始めていることを示している」と指摘。カナダ中央銀行が政策金利をさらに引き下げる可能性が高まった、と述べた。また、モントリオール銀行(BMO)のチーフエコノミスト兼マネージング・ディレクターのダグラス・ポーター氏は「製造業において減少(7,100人減)しているが、カナダ統計局は3月12日に米国が発動した鉄鋼・アルミニウム関税の拡大措置について具体的な言及をしていない」と述べ、業種別にみた場合、貿易紛争に直接起因する明確な兆候はなく、損失は広範囲にわたっていると分析した。ただし、地域別にみた場合は、オンタリオ州が米国の保護主義の影響を最も受けているほか、相対的に経済規模の大きいオンタリオ州、ケベック州、アルバータ州の雇用がいずれも減少したことを挙げ、貿易の不確実性が重くのしかかっているとも指摘している。

(注)カナダ統計局の定義:主な仕事または唯一の仕事として勤務し、通常週に30時間以上働く形態を指す。

(井口まゆ子)

(カナダ、米国)

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