カザフスタンのベンチャーキャピタルに聞く、エコシステムの魅力と課題
(カザフスタン)
タシケント発
2025年04月28日
カザフスタンは、ベンチャーキャピタル(VC)投資が中央アジアで最も活発な国だ。2024年の投資総額は7,100万ドルに上り、中央アジア全体の74.7%を占めた(2025年4月7日記事参照)。同国でスタートアップ(新興企業)への投資や支援を通じてエコシステムの重要な役割を担っているのがモスト・ベンチャーズだ。同社のアリム・ハミトフ最高経営責任者(CEO)にカザフスタンのエコシステムについて聞いた(4月17日)。
アリム・ハミトフCEO(同社提供)
(問)会社について。
(答)当社の持ち株会社を筆頭とし、傘下のモスト・ベンチャーズをはじめVC投資や投資家教育、アクセラレータ機能(注1)を持つ企業などがカザフスタン発の新興企業に投資や支援を行っている。
(問)カザフスタンのエコシステムの魅力は。
(答)まず、地理的位置だ。ユーラシアの中心地にあり、多くの地域へのアクセスに恵まれている。また、ソ連時代からの高レベルの理数教育に基づく人材がいる。国際的なプログラミングコンテスト(注2)でも好成績を収めている。加えて、当初から外国展開を目指す野心を持つ新興企業が多い。当社が出資している新興企業30社のうち15社は、カザフスタン発祥だが、本社を米国や中東、東アジアなどに設置。グローバル進出を実現している。
(問)課題は。
(答)しかるべき新興企業に資金が行き届かない資金ギャップだ。その解決のため、当社では投資家教育を行い、新興企業に対する目利き力を育成している。また、新興企業自身への教育も必要。世界へのスケールアップに向けたノウハウ提供などの支援の余地が大きい。加えて、世界から当地への注目度の向上だ。当地のエコシステムや新興企業を世界に知ってもらい、多くの企業や人が集まる場所にしたい。
(問)カザフスタン政府による新興企業支援をどう評価するか。
(答)アスタナ・ハブ(2019年9月19日記事参照)や10億ドル規模の民間投資を呼び込む政府系ファンドなどで充実しつつある。ただ、政府がより支援する余地はある。特に資源依存経済からの脱却に向け政府はAI(人工知能)やフィンテックなどの振興に戦略的にリソースを投入すべきだと考える。
(問)今後の展望は。
(答)新興企業向けマイクロファイナンス事業を行う。IT分野はビジネスの性質上、少額資金が即座に必要になるためだ。中央アジア各国に新興企業が集まるハブも作りたい。
(注1)スタートアップ企業や起業家の事業を成長させるための支援を行う組織やプログラム。
(注2)国際大学対抗プログラミングコンテストであるICPC2023世界大会では、カザフスタン出身者の所属するチームが4位となり金賞を受賞。同コンテストには、世界各国から選ばれた130チームが参加した。
(一瀬友太)
(カザフスタン)
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