ブリティッシュ・スチールの製鉄所継続へ緊急法案可決、政府に管理権限付与

(英国、中国)

ロンドン発

2025年04月16日

英国議会は4月12日、3月末に閉鎖が発表された鉄鋼大手ブリティッシュ・スチールのスカンソープ製鉄所の操業継続に向け、緊急法案を可決した。

同社は2019年2月に経営破綻した後、2020年3月に中国の敬業集団により買収されていた。しかし、厳しい市場環境や環境関連のコストの増大、米国による追加関税の賦課(2025年3月12日記事参照)などの影響を受け、高炉や製鉄のオペレーションが財務面で持続可能ではなくなったとして、3月末にスカンソープ製鉄所の2基の高炉と製鉄事業の閉鎖と、圧延能力の削減を検討すると発表していた。敬業集団は英国政府と以前から交渉を行っており、5億ポンド(約945億円、1ポンド=約189円)の共同投資案などが英国政府から提案されていたものの、合意には至らず、閉鎖の決断に至ったとしている。その後も英国政府は原料購入などを提案していたが、合意することはできず、キア・スターマー首相が4月11日、高炉の維持に向けた措置の審議のために、翌12日に議会を緊急招集することを決定した。

ジョナサン・レイノルズ・ビジネス・通商相は12日の議会開会に当たっての演説で、政府から敬業集団に対する提案は寛大だったにもかかわらず、「(敬業集団が)過剰なほどにさらに多くを求めてきた」と述べた。さらに、レイノルズ氏は、政府としてその後も粘り強く交渉を継続していたが、敬業集団が高炉を維持して適切な稼働状態に保つことにも同意しなかったとして、「行動を起こさざるを得なくなった」と続けた。

今回採択された法案は、ブリティッシュ・スチールの取締役会や従業員を管理する権限を政府に付与するもので、これによって給与の支払いや原料の購入、高炉の稼働を継続する。さらに、敬業集団の指示に反するかたちで操業継続のために働いた従業員が同社に解雇される場合でも、復職を可能とする。

今回の法案では製鉄所の所有権の移転は定めておらず、国有化にはつながらない。一方で、レイノルズ氏は12日の議会答弁で、民間企業との共同投資が政府の目標としつつ、現時点では国有化が可能性の高い選択肢になるだろうと発言している。

(山田恭之)

(英国、中国)

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