EU首脳、規制簡素化法案の早期採択を要請、ウクライナへの軍事支援は進展せず

(EU、ウクライナ、ハンガリー)

ブリュッセル発

2025年03月24日

欧州理事会(EU首脳会議)は3月20日、経済政策に関する会合をブリュッセルで開催した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州理事会のアントニオ・コスタ常任議長は、全加盟国が経済政策を加速させることで一致したと強調し、特に規制の簡素化や、エネルギー価格の引き下げ、域内貯蓄の域内投資へ充当を重視するとした。

まず、欧州理事会は、欧州委員会の第2次フォン・デア・ライエン体制での経済政策の基本枠組みとなる「競争力コンパス」(2025年2月6日記事参照)など主要政策を歓迎した。その上で規制の簡素化については、炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則簡素化法案(2025年3月4日記事参照)など、オムニバス法案を2025年のできる限り早期に成立させることをEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会に求めた。特に企業持続可能性報告指令(CSRD)簡素化法案(2025年3月7日記事参照)と、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)簡素化法案(2025年3月7日記事参照)については、遅くとも2025年6月までに採択すべきとしている。EUの立法プロセスでは法案の採択には通常1年以上を要することから、欧州理事会は規制の簡素化を特に急務で取り組むべき課題と位置付けていることがうかがえる。

エネルギー価格の引き下げについては、クリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)の一環として発表された「手頃なエネルギーに向けた行動計画」を支持する一方で、貯蓄・投資同盟(2024年4月25日記事参照)については、実現に向けて既存の政策に引き続き取り組むべきとしつつ、焦点の1つとなっているEUレベルでの資本市場の監督の在り方については、欧州委に評価作業を完了させるよう求めるにとどめた。

このほか、欧州委の防衛白書(2025年3月21日記事参照)の発表を受け、欧州理事会は今後5年間で欧州の防衛準備の強化を加速させる方針を強調したほか、EU理事会と欧州議会に対し、関係法案(2025年3月21日記事参照)の速やかな採択を求めた。

ウクライナ軍事支援の具体策は盛り込まず

前回の欧州理事会(2025年3月11日記事参照)に続き、ウクライナ支援に関する明確な進展はなかった。今回も前回同様、ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相の反対により、ウクライナ支援に関する文言は総括には盛り込まれず、ハンガリーを除く26加盟国首脳による声明が発表された。内容はウクライナ支持をあらためて述べるにとどまり、具体的な軍事支援策は盛り込まなかった。

(吉沼啓介)

(EU、ウクライナ、ハンガリー)

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