三菱重工、オーストラリアで港湾での水素開発に協力
(オーストラリア)
シドニー発
2025年03月27日
オーストラリア・ニューサウスウェールズ(NSW)州にあるニューカッスル港湾局は3月11日、同港湾地区のクリーンエネルギー専用地区の開発を推進するため、三菱重工業とアドバイザリー契約を締結したことを発表した。ニューカッスルは、連邦政府およびNSW州から水素ハブに選定されているハンター・バレー地域(以下、ハンター地域)にある(2024年6月4日記事参照)。
ニューカッスル港では、220ヘクタールの工業用地を用いて、グリーン水素やアンモニアなどクリーンエネルギーの生産、貯蔵、供給、海外輸出を行うクリーンエネルギー専用地区の開発が計画され、連邦政府による1億オーストラリア・ドル(約95億円、豪ドル、1豪ドル=約95円)(注)の支援が決まっている。ニューカッスル港湾局は、現地企業とクリーンエネルギー専用地区開発の基本設計(FEED)を実施している。これに対して、三菱重工業は、水素・アンモニアの製造・貯蔵・流通に関する技術的知見を港湾局へ提供する。ジェトロが3月17日、三菱重工業に確認したところ、同社は既に米国ユタ州(2022年6月20日記事参照)や兵庫県高砂市にある世界初の水素発電実証設備「高砂水素パーク」を含めて、グリーン水素の生産、取り扱い、アンモニア合成、貯蔵に関する実績を有しているため、こうした知見が地区の開発に生かされるという。オーストラリアのグリーン水素の有望地域で、日本企業の高度な技術や製品が今後活用されることが期待される。
なお、連邦政府の水素生産価格差支援策「水素ヘッドスタートプログラム」(2025年2月14日付地域・分析レポート参照)の第1ラウンドとして、2023年12月にグリーン水素プロジェクトの最終候補6件が選ばれ、うち2件がハンター地域のプロジェクトだった。ニューカッスルを含むハンター地域は、既存の大規模な港湾や輸送インフラがあり、水素のオフテイカー(引き取り手)となるアンモニア製造などの重工業のサプライチェーンが存在すること、地域内で大規模な再生可能エネルギー発電の開発地区の計画があることにより、オーストラリアの中でグリーン水素生産と将来的な輸出のポテンシャルが高い地域となっている。
(注)2022年10月に発表された、2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)予算案に盛り込まれている。
(青島春枝)
(オーストラリア)
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