三菱パワーと米マグナムのグリーン水素事業、米エネルギー省が5億ドルの債務保証

(米国、日本)

ヒューストン発

2022年06月20日

三菱重工業子会社の三菱パワー・アメリカ(本社:フロリダ州レイクメアリー)と米国で岩塩層内のエネルギー貯蔵ハブ開発・運営を手掛けるマグナム・デベロップメント(本社:ユタ州ソルトレイクシティ)は6月9日、両社がユタ州中央部で取り組む世界最大規模の産業用グリーン水素(注1)製造・貯蔵施設の開発事業について、米国エネルギー省(DOE)から5億440万ドルの融資の債務保証を受けたと発表した。「先進的クリーンエネルギー貯蔵事業(ACES:Advanced Clean Energy Storage)」と呼ばれる同事業を通じて、日量最大100トンのグリーン水素が製造され、製造後に2つの巨大な岩塩層内の空洞に貯蔵(注2)されるとしている。

また、製造されたグリーン水素は、ユタ州の電力会社であるインターマウンテン電力(IPA)を通じて、既存の化石燃料を使用した発電方法から、水素使用による二酸化炭素(CO2)を排出しない発電方法への転換を目指すプロジェクトに活用される予定だ。IPAの発電所で使用されるガスタービンは、2025年から30%のグリーン水素と70%の天然ガスの混合ガスで稼働させるほか、2045年までに段階的に100%のグリーン水素で稼働させるなど、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素ガスタービンを実装する計画で、ロッキー山脈をまたいでカリフォルニア州およびユタ州に発電電力を幅広く供給することを見込んでいる。

DOEのジェニファー・グランホルム長官は「DOEは、バイデン大統領の就任初日から、米国民にクリーンで信頼できるエネルギーを展開する新興技術に優先的に資金提供することを優先事項としてきた。ゼロエミッション、長期的なエネルギー貯蔵ソリューションに資するクリーンな水素の商業展開を加速させることは、われわれの経済を脱炭素化し、クリーンエネルギーに係る高賃金な雇用を創出し、送電網へのより多くの再生可能エネルギーの供給を可能にすることにつながる」と述べている。

なお、三菱重工グループにおける脱炭素化に向けた取り組みとして、2022年4月22日に、三菱重工業はカーボンリサイクル燃料「エレクトロフューエル(Electrofuels)」の日本市場展開に向け、米国インフィニウムとの覚書締結を発表した(2022年4月26日記事参照)。また、2022年5月11日には、大阪ガスと三菱重工傘下の米オリデンは、米国内の太陽光発電所の共同開発合意を発表した(2022年5月18日記事参照

(注1)水を再生可能エネルギーを利用して電気分解することで製造される水素。製造工程で、CO2を発生させないため環境に優しいエネルギーとされる。

(注2)各貯蔵空間に150ギガワット時(GWh)相当のグリーン水素を貯蔵可能としている。

(沖本憲司)

(米国、日本)

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