シンガポールの生き残りに移民が不可欠、毎年約2万人に国籍授与
(シンガポール)
シンガポール発
2025年03月14日
シンガポールのリー・シェンロン上級相は3月9日、国籍授与式典での演説において、「(同国の)生き残りのためには、移民が不可欠」との考えを示した。
統計局の発表によると、2024年の国民の出生数は2024年に2万9,237人で、前年比1.2%の増加となった。しかし、国民(永住権者を含む)の出生率(合計特殊出生率)は0.97と、2年連続で1を下回った。また、国民に占める65歳以上の割合は2014年の12.4%から2024年に19.9%へと拡大しており、少子高齢化が進行している(2024年10月1日記事参照)。リー上級相は、国民の出生数の低迷と高齢化の進行のほか、国内の労働力が既に完全雇用状態にあると指摘。「経済成長を維持するためにも、国民を補完する新たな国籍取得者が必要だ」と語った。
首相府戦略グループによると、同国では2019~2023年の5年間に、年平均で約2万2,400人が新規に国籍を取得し、2014~2018年の新規国籍取得者の同2万1,600人と比べて若干増加した。また、国籍取得の予備軍となる外国人の永住権者(PR)の新規取得者も、2014~2018年の同3万1,100人から2019~2023年に同3万2,600人へとやや増加した。
同上級相は、移民が既存の国民との対立を引き起こすなど、「どの国にとってもセンシティブな問題だ」と述べた。その上で、シンガポールでは「受け入れる移民の数を慎重に管理している」と語り、異なる民族間および既存の国民との関係の調和に注意を払っていると説明した。同上級相は「(移民の受け入れから)国を閉ざしてしまえば、機会を損失し、他の近隣都市と同じ状況に陥ってしまう」と警告した。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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