インドネシア工業省、アップルと投資計画に関する覚書を締結
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年03月04日
インドネシア工業省は2月26日、米国アップルとの間で投資計画に関する覚書(MOU)を締結した。アップルは2028年までに、総額約2兆6,200億ルピア(約249億円、1ルピア=約0.0095円)の追加投資を実施し、国内に研究開発(R&D)センターを新設する。政府はこれを受け、販売が禁止されていた「iPhone 16」シリーズの国内販売を認可する方針を示した(「コンパス」2025年2月27日)。
インドネシアでは、携帯電話を含む電子機器に対して国産化率(TKDN)の達成が義務付けられている(注)。情報通信大臣規則2021年第13号により、スマートフォンのTKDNは35%以上でなければならないと規定されており、今後は40%への引き上げが検討されているとの報道もある(「ビスニス」2025年1月8日)。なお、携帯電話やタブレット端末のTKDNについて定める工業大臣規則2017年第29号では、「製造」や「アプリケーション開発」の要素からTKDNを算出する方式のほか、R&Dなどイノベーション関連の投資額によりTKDNが算出される方式が規定されている。後段の方式では、申請企業がインドネシア国内で行う一定規模の投資計画を提出し、承認を受けることでその投資額に応じたTKDN換算値(1兆ルピア以上の投資は40%相当)が付与される。現地報道によると、アップルはこれまでR&D投資によって要件充足を図ってきたもようだ(「テンポ」2025年2月28日)。しかし、他国では2024年に発売されたiPhone 16は、TKDNの最低要件を満たさず、政府は販売を禁止していた(「ビスニス」2025年2月26日)。
最終的にアップルが追加投資額を引き上げ、ジャカルタ近郊にアジア初となるR&Dセンターを設立するとともに、国内15の主要大学との連携による半導体設計やソフトウエア開発の研究を行うことで合意した。また、高度IT人材の育成を推進するためのアカデミーも新設するとの方針も示された(「コンパス」2025年2月26日)。
政府は、これらの投資が国内のデジタル産業の発展に大きく寄与すると評価し、国内販売を許可する方針を固めた。販売許可に必要なTKDN証明書は近く発行される見込みだ(「コンタン」2025年2月26日)。
(注)国産化優先政策の概要などについては2022年5月27日付地域・分析レポート参照。また、国産化率の算定方法などについては2023年12月27日付地域・分析レポート参照。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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