INSS第18回年次国際会議開催、イスラエル取り巻く安全保障環境の変化を議論

(イスラエル、パレスチナ、米国、イラン)

テルアビブ発

2025年03月11日

イスラエルのテルアビブ大学付属国家安全保障研究所(INSS)は2月25日、テルアビブで第18回年次国際会議を開催した。同会議では、退役軍人や政府閣僚、戦略アナリストを含む専門家らがパレスチナ自治区ガザ地区、対イラン、中東地域の脅威などに焦点を当て、イスラエルを取り巻く安全保障環境の変化について議論した。

ガザでの停戦や人質解放に関し、INSS所長のタミール・ハイマン氏は、全ての人質の帰還とハマスに代わるガザの統治機構の確立に、ドナルド・トランプ米政権の積極性と破壊のエネルギーを活用すべきと強調した。ベニー・ガンツ前国防相は「戦後」のガザ統治について、「パレスチナ自治政府(PA)には統治能力がない」と主張し、「われわれはガザを支配する必要はないが、ハマスがガザを支配することを望んでいない。ガザでは多くの人道的課題を伴う混沌(こんとん)とした10年が待っている」と述べた。オフィル・ソフェル移民統合相は、軍事行動と人質交渉のどちらを優先すべきかについては明言を避けた。ヤイル・ゴラン労働党党首は「われわれは人質(解放)か、戦闘を続けるかの難しい選択を迫られているが、人質には時間がないので、人質を解放してから、ハマスへの対応を決めるべきだ」と述べた。

イラン情勢やイランの核の脅威への対応について、INSS上級研究員でイラン問題専門家のラズ・ジムト博士は、イランの財政赤字問題やリーダーシップの危機、政府に対する国民の信頼欠如、イスラエルに対する抑止力の欠如など、最も困難な時期にあると主張した。さらに「2025年はイスラエルと米国がイランの核施設を攻撃するか否かだけでなく、イラン自身にとっても、ハメネイ師が権力の座にとどまるために妥協の代償を払うか、それとも対決の代償を払うか決断の年になるだろう」と述べた。元駐イスラエル米大使のダン・シャピロ氏は「トランプ大統領はイランの核問題の外交的解決を望んでいるが、イランが今後6~9カ月の間に核交渉で合意する可能性は低いので、軍事的選択肢がテーブルに上がる必要がある」と述べた。INSSのイラン・シーア派枢軸研究プログラムディレクターのシマ・シャイン氏はイランの核脅威に対するイスラエルが取るべき政策について、「軍事的観点のほか、国際社会の観点や安全保障の観点からも、イスラエルがこの場面で単独で行動することは難しい。また、イランは必ず反撃してくるので、イランへの核攻撃は実際に使用できる選択肢であるべきだが、その前に他の全ての手段を活用して、イランに核プログラムの停止を要求する必要がある」と主張した。

イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。

(中溝丘、アリエル・マロム)

(イスラエル、パレスチナ、米国、イラン)

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