2月の米消費者物価指数は伸び低下も先行きは不透明

(米国)

ニューヨーク発

2025年03月13日

米国労働省が3 月12日に発表した2025年2月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比2.8%上昇となった。2024年9月以来5カ月ぶりに伸びが縮小した。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数も、同3.1%上昇と前月(3.3%上昇)より伸びが鈍化した(添付資料図1、表参照)。コア指数を年率でみた場合、前月比、3カ月前比、6カ月前比が、それぞれ2.8%上昇(前月5.5%上昇)、3.6%上昇(同3.8%上昇)、3.6%上昇(同3.7%上昇)だった。CPI、コアいずれも市場予想を下回る伸びとなった。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは0.2%下落し前月の1.0%上昇から反転した。一方、前月と同様に鶏卵の値上がり(58.8%上昇)が続き、外食(3.7%上昇)の伸びが加速したことから、食料品は2.6%上昇と前月の2.4%上昇からわずかに伸びが拡大した。

コア指数では、新車(0.3%下落)、中古車(0.8%上昇)ともに前月からの変化はわずかで、財部門も0.1%下落で前月と変わらなかった。サービスは4.1%上昇したが、伸び率は4カ月連続で低下した。物価のうち3割のウエートを占める住居費は、帰属家賃(4.4%上昇)、賃料(4.1%上昇)がいずれも前月から伸びが縮小した結果、4.2%上昇と4カ月連続で伸びが低下した。

その他のサービスでは、医療サービスが3.0%上昇(前月2.7%上昇)と伸びが加速する一方、航空運賃が0.7%下落(同7.1%上昇)と大幅に減速した結果、住居費を除くサービスは3.8%上昇となり、前月の3.9%上昇からわずかに伸びが鈍化した(添付資料図2参照)。航空運賃の低下に関しては、需要の減退が要因と指摘する声もある(「ウォールストリート・ジャーナル」電子版3月12日)。

なお、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、2025年2月4日から10%の対中追加関税が課され、3月3日には20%に引き上げられている(2025年3月4日記事参照)。中国からの輸入が比較的多い3品目についてみると、パソコンは前年同月比6.0%減(前月6.0%減)、前月比0.7%増(前月0.9%増)で、スマートフォンが前年同月比13.7%減(前月12.3%減)(前月比はデータなし)、玩具が前年同月比1.9%減(前月2.6%減)、前月比0.2%減(前月0.8%増)と、2月時点ではまだ消費者物価には大きな影響を及ぼしていないもようだ。もっとも、800ドル以下の少額貨物は、中国からの輸入に非課税基準額(デミニミス)ルールの適用停止が留保されている(2025年2月10日記事参照)ことから、一部の品目でこの恩恵を受けている可能性もある。また、輸入物価の上昇が消費者物価に反映されるまでには、企業側の在庫などで一定のタイムラグが生じることから、今後徐々に反映されてくる可能性もあり、これらの品目の価格改定の動きには引き続き留意が必要だ。

2月は、引き続き安定的に住居費の伸びが低下したことなどで、インフレ率が低下した。しかし、関税や移民政策の影響によるコスト上昇圧力もあり、今後の動向は不透明感が増している。今回の結果について、「インフレには良いニュースだが、関税導入前の良いニュースだ」との指摘も上がる(CBSニュース3月12日)。

(加藤翔一)

(米国)

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