メキシコ政府、遺伝子組み換えトウモロコシを巡るUSMCAパネル裁定を履行
(メキシコ、米国)
調査部
2025年02月07日
メキシコ経済省は2月6日、夕刻の官報で省令を公布し、2023年2月5日付官報公布政令に基づく遺伝子組み換えトウモロコシの人の食用としての利用禁止および食品工業用・飼料用としての利用の段階的制限(2023年2月16日記事参照)を撤廃した。具体的には、政令の第6条II項(注1)、第7条(注2)、第8条(注3)が定める措置を撤廃する内容であり、同政令が他に定めるグリホサート(除草剤)の使用禁止や遺伝子組み換えトウモロコシの種まきの禁止措置は維持されている。2024年12月20日に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の紛争解決パネルにおいて、メキシコが敗訴し、米国の主張を認める最終報告書が出たことが背景にある(2024年12月24日記事参照)。
クラウディア・シェインバウム大統領は、USMCAのパネル裁定を受けても、メキシコが原産国として知られるトウモロコシの固有種を保護する重要性を強調し、2025年2月に遺伝子組み換えトウモロコシの種まきを禁止する新たな立法措置を議会と協力して導入する意向を示していた(大統領府プレスリリース2024年12月21日付)。そして2025年1月26日には、メキシコに存在する59種類のトウモロコシの固有品種を保護するため、憲法第4条と第27条を改正し、遺伝子組み換えトウモロコシの種まきを憲法で禁止する改正案を国会に送付したことを明らかにした(大統領府プレスリリース2025年1月26日付
)。憲法改正案は、種まきを禁止する内容であり、消費・利用、輸入を禁止するものではない。USMCAのパネルでは、メキシコの遺伝子組み換えトウモロコシの消費・利用を禁止する措置が、人間や動物などの生命や健康に対するリスクの評価に基づいた措置ではないと結論付けているため、メキシコ政府は食用、食品工業用、飼料用としての利用を禁止する措置のみを撤廃することでパネル裁定を履行したことになる、と解釈したようだ。
自動車の原産地規則を巡る解釈の相違は未解決
米国とメキシコの間で争われたUSMCAの紛争解決パネルとしては、自動車分野の原産地規則を巡る解釈の相違について、メキシコとカナダが米国を提訴した案件がある。同案件については、2023年1月11日に米国の主張が協定不整合との最終報告が出ている(2023年1月13日記事参照)。同報告が出てから既に2年が経過しているが、米国は「まだ合意に至っていない」として、従う姿勢をみせていない。
メキシコ政府も遺伝子組み換えトウモロコシの使用を巡り、パネルの裁定に従わないという選択肢も考えられたが、不法移民や合成麻薬の流入阻止を目的とするトランプ新政権の対メキシコ関税をUSMCA違反と主張するメキシコ政府(注4)としては、USMCAのルールを守ることを今回最優先したとみる向きもある。
(注1)メキシコ政府当局が、遺伝子組み換えトウモロコシの人の食用としての既存の利用許可を取り消し、今後の利用許可を与えないことを規定。
(注2)メキシコ政府当局が、動物の飼料としての遺伝子組み換えトウモロコシの利用や食品工業用の利用を段階的に廃止するための対策を講じることを規定。
(注3)飼料用途や食品工業用途としての遺伝子組み換えトウモロコシの利用の段階的廃止については、代替作物(非遺伝子組み換えトウモロコシや他の飼料用・食品工業用作物)の供給能力の確保を前提として行うことを規定。
(注4)マルセロ・エブラル経済相は、2月2日付の自身のSNSにおいて、メキシコ産品に25%の関税を課す米国の大統領令は、メキシコとトランプ大統領本人が交渉し、近年で最も成功を納めた貿易協定であるUSMCAに対する明白な違反行為であると投稿している。
(中畑貴雄)
(メキシコ、米国)
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