EU首脳、トランプ米次期大統領の就任を前に断固としたウクライナ支持で一致

(EU)

ブリュッセル発

2025年01月08日

欧州理事会(EU首脳会議)は2024年12月19日、アントニオ・コスタ前ポルトガル首相が欧州理事会常任議長に就任し、EUが新体制に移行して以来(2024年12月3日記事参照)、初となる会合をブリュッセルで開催し、総括を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の会合では、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領が参加するなどウクライナ情勢が議論の中心となった。また、2025年1月20日のドナルド・トランプ米国次期大統領の就任を前にした対米関係や、アサド政権が崩壊したシリアなど中東情勢も議論された。

総括では、ウクライナ支援をあらためて表明。政治、財政、軍事などあらゆる面で必要な限りウクライナを支援する方針を再確認した。その上で、防空システム、弾薬、ミサイルなどの迅速な供給を加盟国に呼びかけたほか、採択したばかりの対ロシア制裁第15弾パッケージ(2024年12月18日記事参照)を実施するとともに、凍結中のロシア中央銀行の資産から得られる収益(2024年5月27日記事参照)などを活用した財政支援を2025年は約300億ユーロ規模にする方針を示した。

また、総括では、当事国であるウクライナ抜きでのいかなるイニシアチブにも反対するとの立場を明確にした。コスタ常任議長は会合後の記者会見で、今後、和平交渉が行われる場合、その内容や条件の判断はウクライナのみができると強調した。

対米関係に関しては、コスタ常任議長は、米国はEUの最も親密な相手国の1つであり続けるとし、対米関係の強化に向けた米国との実利的な協議を続けていくと発言。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も、中国の過剰生産問題など世界的な経済問題においてEUと米国は共通の利益を有するとし、米国の次期大統領に対して積極的な働きかけを行うとした。フォン・デア・ライエン委員長は、米国との強固な関係の維持をEUの優先課題とすることで加盟国首脳陣と一致したと明らかにした一方で、総括には対米関係に関する文言は盛り込まれておらず、具体的な方針は打ち出せていない。

(吉沼啓介)

(EU)

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