米先端技術見本市CES2025、商用車の自動化や中国メーカーの動向に注目
(米国)
ニューヨーク発
2025年01月10日
米国ネバダ州ラスベガスで1月7日、先端技術見本市「CES2025」の一般公開が始まった(2025年1月8日記事参照)。主催者である全米民生技術協会(CTA)によると、10日までの会期中、1,400社のスタートアップを含む4,500以上の団体が出展し、1,100人のスピーカーによる300以上のセミナーなどが行われている。
CESには近年、モーターショーの要素も加わり、各自動車メーカーのコンセプトカーのショーケースの役割も果たしている。今回はホンダが、自動車関連の会場ではひときわ広いスペースを占有し、2026年にグローバル市場に投入予定のバッテリー式電気自動車(BEV)でレベル3の自動運転機能を搭載する「0シリーズ」のサルーンとスポーツ用多目的車(SUV)のプロトタイプを世界初公開した。同社は既にゼネラルモーターズ(GM)との共同開発モデルである「プロローグ」が米国で販売好調だが、同シリーズを加えることで電気自動車(EV)販売目標(注)の達成を目指す。また別会場では、ソニーとの合弁会社であるソニー・ホンダモビリティが、同社初の車両となるBEV「アフィーラ1」を初披露。ソニーのインフォテインメントシステムやセンサーなどを搭載する車両で、参加者の注目を集めた。
中国メーカー車も一定の存在感を示した。ジーリーホールディンググループ(浙江吉利控股集団)の傘下で、設立3年目のEVメーカーのジーカー(Zeekr、本社:浙江省杭州市)が初めて出展した。「テクノロジーをアピールし、世界でのパートナーを探す」ことが目的だという。BYDやジーリーと並ぶ大手のGWM(長城汽車、河北省保定市)はプラグインハイブリッド車(PHEV)のSUV「Wey07」を出展。さらに、シャオペン(小鵬汽車、広東省広州市)傘下のXPENG AEROHTが、2025年に中国国内で販売開始を予定する空飛ぶ車とその格納車両をアピールした。いずれの企業もジェトロの取材に対し、現在の米国の対中政策などを考慮し、「近いうちに米国内で生産、販売を実現することは難しいと理解している。現在は様子見の段階だ」と話した。
今回のCESの目玉の1つは、建機や農業用などの作業車両の電動化や自動化だ。深刻な人材不足や作業の安全性向上の必要性を受け、人工知能(AI)や自動化機能を搭載した大型車両のニーズが高まっているという。日系企業では、コマツのほか、クボタやクレーンメーカーのタダノなどが初出展。また、米国系建機メーカーのキャタピラー、ジョン・ディア、オシュコシュなども「注目度はこれまでになく高い」(ジョン・ディア担当者)と、例年以上に力を入れている印象だ。「商業用車両のハイテク化をアピールし、人材を集める目的もある」(日系メーカー関係者)という。
サステナビリティの観点では、バッテリーリサイクルのレッドウッド・マテリアルズがパナソニックとともに基調講演を行い、レッドウッド・マテリアルズが正極材の生産を可能にすることで、パナソニックをパートナーとして「クローズドループ」(注2)を実現すると発表した(注3)。他方、別のセッションでは、電池メーカーや研究者らが、バッテリーのリサイクルの課題と解決策を議論。電池回収大手のコール・トゥー・リサイクル(本社:ジョージア州)によると、同社が2024年に回収した900万個のバッテリーのうち、廃棄物処理施設で 453 件の大規模な火災が報告されており、リサイクルが拡大する中で、製造業者の責任の明確化や消費者教育による安全性の向上が急務であることなどが議論された。
(注1)2040年までにグローバルで全新車をBEVとする電動化戦略。
(注2)廃棄される製品やその部材などを新たな資源として利用し、無限に循環させること。
(注3)パナソニック エナジーは2022年11月、レッドウッド・マテリアルズと、リチウムイオン電池の正極材および銅箔(どうはく)の調達契約を締結している(2022年11月16日記事参照)。
(大原典子)
(米国)
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