2024年通年のGDP成長率予測、3.5%前後に上方修正
(シンガポール)
シンガポール発
2024年11月29日
シンガポール貿易産業省(MTI)は11月22日、2024年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(経済成長率)を前年同期比5.4%と発表した。第2四半期(4~6月)の同3.0%(改定値)から成長が加速し、速報値からも1.3ポイント上方修正した(2024年8月20日記事、10月24日記事参照)。産業別に見ると、スマートフォン・PC用の半導体チップに対する需要が成長を支えた製造業(前年同期比11.0%)などの分野が成長に寄与した。季節調整済み前期比では3.2%成長した。
MTIは主要貿易相手国の経済成長について、米国では2024年末にかけて労働市場の状況が徐々に緩和され、消費の伸びが鈍化することから、成長が緩やかになると見込んだ。一方、中国はわずかに成長が加速すると予測した。MTIは、各国・地域の経済状況と第3四半期までのシンガポール経済の実績から、2024年通年の成長予測について、8月時点の前年比「2.0~3.0%」から、「3.5%前後」へ引き上げた。
2025年は、米国では消費の伸びの鈍化、中国では輸出の伸びの鈍化などから、両国とも2024年よりもわずかに成長が鈍化すると予測した。シンガポールの2025年のGDP成長率は「1.0~3.0%」と予測し、成長の下振れリスクとして、(1)地政学的な紛争と主要国間の貿易摩擦のさらなる激化が部品価格や生産コストの上昇、政策の不確実性の増大につながり、世界的な投資と貿易の減少を招いて、成長の重荷となるリスク、(2)世界的なディスインフレーション(注1)の混乱が金融引き締めの長期化と、各国金融政策の非同期化(ディシンクロナイゼーション)を招き、金融システムに潜在する脆弱性を誘発するリスクの2点を指摘した。
財貿易増加も、第3四半期NODXは予測下回る
MTI管轄下のシンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)が同日発表した2024年第3四半期の貿易統計によると、貿易総額は3,219億4,030万シンガポール・ドル(約36兆573億1,360万円、Sドル、1Sドル=約112円)で、前年同期比5.5%増加した。輸出は5.8%増の約1,695億7,940万Sドル、輸入は5.2%増の約1,523億6,090万Sドルだった。
非石油部門の地場輸出額(NODX、注2)は453億2,880万Sドルで、前年同期比9.2%増加し、前期(6.5%減少)から転じた。うちエレクトロニクス製品は17.0%増加し、非エレクトロニクス製品は7.0%増加した。国・地域別にみると、マレーシア(30.7%増)、中国(12.7%増)、米国(6.0%増)がNODX増加への影響が大きかった。
2024年の見通しについては、8月時点で財貿易総額が「5.0~6.0%増」、NODXが「4.0~5.0%増」と予測していたが、それぞれ「5%増前後」、「1%増前後」に見直した。見直し理由として、医薬品や船舶・ボートの分野が振るわなかったことから、第3四半期NODXが予測を下回ったことなどを挙げた。2025年は、NODXを「1.0%~3.0%増」と予測した。
(注1)インフレーションの状況下で、中央銀行による弾力的な金融政策の結果、インフレーションからは抜け出たが、デフレーションにはなっていない状況のこと。
(注2)自国生産による財輸出で、再輸出を除く。
(糸川更恵)
(シンガポール)
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