米国際貿易委、アパレル輸入報告書を公表、中国からの調達多元化の進展を報告
(米国、中国、バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、パキスタン、ベトナム)
ニューヨーク発
2024年10月02日
米国国際貿易委員会(USITC)は9月30日、アジア5カ国のアパレル産業の輸出競争力に関する調査報告書を公表した。同調査は、米国通商代表部(USTR)が2023年12月にUSITCに実施を要請していたもので、新型コロナウイルスのパンデミック以降の繊維・アパレル製品の生産・貿易・消費パターンの変化の把握を目的としている。なお、同報告書の公表をもって、調査対象国のアパレル製品の米国輸入に対して、数量制限や関税引き上げなどが加えられることはない。
346ページに及ぶ報告書では、直近10年間(2013~2023年)のバングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、パキスタンのアパレル製品の米国への輸入額の推移、各国の輸出競争力の要因などに関する調査結果がまとめられている。
USITCの貿易統計によると、2023年の米国のアパレル製品の輸入総額は790億ドルだった。輸入国別では中国(169億ドル)が最大で、ベトナム(141億ドル)、バングラデシュ(71億ドル)、インド(46億ドル)、インドネシア(42億ドル)、カンボジア(34億ドル)が続いた(添付資料図参照)。ただし、中国からの輸入額のシェアは、2013年の37.7%から2023年に21.4%へ低下した(添付資料表参照)。対照的に、報告書で取り上げられた5カ国のシェアの合計は、2013年の21.2%から2023年に27.1%に上昇した。
報告書では5カ国のシェアが上昇した要因について、総じて調達価格面での優位性を挙げた。そのほかの要因については、例えばカンボジアのアパレル産業は、輸出志向の外国直接投資によって牽引されているとして、これはカンボジアが中国の代替調達先として魅力的な選択肢とみなされているためだとした。また、パキスタンのアパレル産業は、同国産綿花の調達容易性や垂直統合された産業構造に牽引されているとしつつ、バイヤーが地政学リスクを懸念材料に挙げていることを報告した。
また、報告書では中国のシェアが低下した要因として、賃金上昇により中国からの調達が割高になったことや、米国の1974年通商法301条に基づく対中追加関税(301条関税、注1)やウイグル強制労働防止法(UFLPA、注2)などの影響を受けて「米国の事業者が中国からの調達を多元化する重要性を認識した」ことを挙げた。また、米国事業者の多くが中国からベトナムに調達先を移転したとも指摘した。ベトナムについては報告書では国別の独立した分析はないものの、ベトナムに調達先が移転した要因について、同国の効率的なサプライチェーンや経済的・政治的安定性が競争優位性をもたらしたことを示唆している。
(注1)301条関税の対象品目の追加や追加関税率の引き上げなどの措置の動向は2024年6月18日付地域・分析レポート参照、301条関税の対象品目の輸入動向は2024年1月18日付地域・分析レポート参照。
(注2)UFLPAに基づく輸入差し止めなど水際措置の執行動向は2024年1月11日付地域・分析レポート参照、重点産業分野や輸入禁止事業者のリスト追加など最新動向はジェトロ特集ウェブページ「ウイグル強制労働防止法」を参照。
(葛西泰介)
(米国、中国、バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、パキスタン、ベトナム)
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