ボルボ傘下のEVメーカーのポールスター、米サウスカロライナ州での生産を開始
(米国、中国、スウェーデン)
アトランタ発
2024年08月16日
スウェーデンの電気自動車(EV)メーカーのポールスターは8月14日、米国サウスカロライナ州で同社のスポーツ用多目的車(SUV)「ポールスター3」の生産を開始したと発表した。
ポールスターは、スウェーデンの自動車メーカーであるボルボとその筆頭株主である中国のジーリーホールディングス(浙江吉利控股集団)の出資により、2017年に設立されたEVメーカー。ボルボは2021年6月、「ポールスター3」の生産に伴い、同社のサウスカロライナ州の工場に1億1,800万ドルの追加投資を行うと発表した(2021年6月24日記事参照)。米国では当初、2022年の生産開始を予定していたが、ポールスターは2023年5月、ソフトウエア開発などが遅れた影響で、生産開始が2024年第1四半期になる見込みと発表。2024年2月には、中国の成都市での「ポールスター3」の生産を開始するとともに、米国では2024年半ばに生産開始予定と発表していた。
今回生産が開始されたサウスカロライナ州工場では、米国と欧州向けに生産し、中国の成都市での生産を補完する。ポールスターのトーマス・インゲンラス最高経営責任者(CEO)は、米国での生産は同社にとって重要なステップで、米国で製造されたEVを米国と欧州で販売することで、より広い範囲でビジネスが強化されると述べた。
米国では、中国の強制的な技術移転など不公正な慣行に対抗するとともに、それらの改善を促すことを目的として、1974年通商法301条に基づく対中追加関税(301条関税)が2018年7月以降、中国原産品に対して賦課されている(2024年6月18日付地域・分析レポート参照)。さらに、米国通商代表部(USTR)は2024年5月、ジョー・バイデン大統領の指示を受けて、EVなど387品目の301条関税の関税率を最大100%に引き上げる見直し案を発表し、8月中旬以降の適用開始に向けて調整中だ(2024年5月23日記事、7月31日記事参照)。「ポールスター3」の米国生産が軌道に乗れば、ポールスターはこれら関税率引き上げの影響を低減できる。
また、民主党のバイデン現政権では、インフレ削減法(IRA)などにより、中国メーカーを排除した国内生産体制の強化に努めている一方、11月の大統領選挙の共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は、中国の自動車メーカーによる米国での生産を認めると取れる趣旨の発言を行った(2024年7月22日記事参照)。ポールスターには、中国のジーリーとその傘下のボルボが出資しており、大統領選挙の行方も同社に影響する可能性があるだろう。
(檀野浩規)
(米国、中国、スウェーデン)
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