米商務省、半導体先端パッケージング研究開発プロジェクトを募集と発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年07月10日

米国商務省は7月9日、半導体先端パッケージングの国内生産能力を確立し加速させるための研究開発(R&D)プロジェクトを募集する、意向通知(NOI)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回の発表は、国立先端パッケージング製造プログラム(NAPMP)に基づく。NAPMPでは、5つのR&D分野に最大16億ドルの連邦予算が充てられている。助成対象となるプロジェクトを複数選定予定で、対象となったプロジェクトに対しては、1件当たり約1億5,000万ドルが拠出される。今回、対象となるR&Dの分野は以下の5つ(注1)。また商務省は、R&Dだけではなく、試作品開発も助成対象とする方針だ。

  • 装置、ツール、プロセス、プロセス統合
  • 電力供給と熱管理
  • フォトニクスと無線周波数(RF)を含むコネクター技術
  • チップレット・エコシステム
  • 共同設計、電子設計自動化(EDA)

NOIPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によれば、今回のR&Dプロジェクトに対する申請者は、米国内(米国領土を含む)に設立された米国の事業体であることが想定されている。非米国系組織が申請者のプロジェクトパートナーとして参加する場合は、当該パートナーの関与が不可欠だと書面で示すことなどが必要となる。なお商務省は、先進的パッケージングにおけるイノベーションに必要なあらゆる専門知識と能力を結集するため、特定の事業体が1者で申請するのではなく、製造、サプライチェーン、顧客、産業、非営利団体、学術界など、各セクターにまたがるコンソーシアムでの応募を強く推奨している(注2)。

具体的な申請手続きは、構想企画書(コンセプトペーパー)の提出と本申請の2段階に分かれ、構想企画書の審査を通った場合のみ、本申請に進むと想定されている。現時点での構想企画書の提出期限は、資金供与機会通知(NOFO)の発表日から約60日後と想定されている。NOFOは追って公表され、その際に詳細な応募資格や手続きが示される(注3)。

米国政府は昨今、経済安全保障の観点から、重要製品のサプライチェーンの強靭(きょうじん)化に注力している。商務省は先端パッケージングについて、人工知能(AI)の発展などに伴いマイクロエレクトロニクスの技術革新が求められ、特にパッケージングにおける技術の飛躍的な進歩が求められていると、その重要性を強調している。国立標準技術研究所(NIST)のローリー・E・ロカシオ所長は発表で、「NAPMPは、強固な研究開発によって推進されるイノベーションを通じて、世界に勝る米国内のパッケージング部門確立を可能にする」と述べた。後工程に分類されるパッケージングは個々で形が違い、その都度、装置の設定を変えることが必要とされているため、生産工場は人件費が安い国に集中しており、人件費などの生産コストが高い米国では採算がとれないとされている。そのため、米国内でパッケージングを行うためには、生産を極力自動化した「先端パッケージング」が必要といわれている。

(注1)NAPMPでは6つの研究分野が示されており、今回助成対象となっていない素材と基盤については、2024年2月末に資金援助概要が発表されている(2024年3月1日記事参照)。素材と基盤のR&Dに関しては、28州から100以上の構想企画書が提出され、そのうち、本申請を提出する8つの応募者が5月に確定された。

(注2)事業体1者のみで応募する場合、その理由の提出が求められる場合がある。

(注3)NOFOはNISTのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開される予定。

(赤平大寿)

(米国)

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