IPEFサプライチェーン協定の初のバーチャル会合開催、米国は協議会と労働権諮問委の議長に
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
ニューヨーク発
2024年07月31日
米国商務省は7月30日、インド太平洋経済枠組み(IPEF)のサプライチェーン協定の下で設立されたIPEFサプライチェーン機関(サプライチェーン協議会、サプライチェーン危機対応ネットワーク、労働権諮問委員会)の初めてのバーチャル会合が終了したと発表した。
IPEFサプライチェーン協定は2月末に日本、米国、フィジー、インド、シンガポールの5カ国で、その後に韓国、タイ、マレーシアで発効し(2024年6月10日記事参照)、IPEFサプライチェーン機関の議長国の選出に向けた調整などが行われていた(2024年2月1日記事参照)。商務省の発表によると、今回の会合で協議会の議長に米国、副議長にインド、危機対応ネットワークの議長に韓国、副議長に日本、労働権諮問委の議長に米国、副議長にフィジーが選出された。いずれも任期は2年間となる。
また、今回の会合では、サプライチェーン協議会で今後の運営の指針となる付託条項が採択された。危機対応ネットワークでは、机上演習の実施などが議論された。IPEFサプライチェーン協定については、有事の際に実際に物資を融通できるのかといった点が以前から課題として指摘されていた(注1)。協議会と危機対応ネットワークの初めての対面会合は、9月に商務省が主催するサプライチェーンサミットの機会を捉えて行われることも確認された。労働権諮問委では、労働権強化に関する優先課題が協議された。同委員会の初回の対面会合は、タイの首都バンコクで8月26~28日に行われることとなった。会合では、IPEFサプライチェーン協定だけでなく、IPEFクリーン経済協定とIPEF公正な経済協定の労働条項についても併せて議論される予定だ。
なお、IPEFのクリーン経済協定と公正な経済協定は6月に署名されているが(2024年6月7日記事参照)、寄託済みなのは、クリーン経済協定はフィジー、日本、公正な経済協定はフィジーのみで、まだ発効に至っていない。両協定は、少なくとも5カ国が寄託してから30日後に発効する。米国では、11月の大統領選挙の候補者として共和党から正式に指名されたドナルド・トランプ前大統領(2024年7月16日記事参照)が、IPEFからの脱退を公言している(注2)。米国がこれら協定を発効できるかは、大統領選挙の結果にも左右されそうだ。
(注1)IPEFサプライチェーン協定の課題などについては、2024年2月20日付地域・分析レポート参照。
(注2)サプライチェーン協定と公正な経済協定は、協定発効後3年後から脱退可能と定めているが、クリーン経済協定は6カ月で脱退可能となっている。
(赤平大寿)
(米国、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、フィジー)
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